3代渡って通うお客さんも 名物立ち食いそば女性店主が見てきた人生模様
画像を見る 吉田屋のラスト1ヶ月を家族3人の絆で乗り切る(撮影:田山達之)

 

■ピークは1日800人のお客さんが。学生運動の熱気が店を包み込むことも

 

「吉田屋」の創業が76年。彩華さんは28歳だった。

 

その2年前には、今でも馬場のランドマークであるBIG BOXも完成して、学生の街はいちだんとにぎやかさを増していた。

 

「開店したとき、かけそば110円でした。それがね、最初からお客さんが来てくれたの。やっぱり場所と時代がよかった。企業戦士なんて言われ始めたころでしょう。少しでも時間を節約したいサラリーマンや、お金のない学生さんに喜ばれました」

 

「ピークのころは、1日800人のお客さんも。うちは8人でいっぱいになる狭さだから、いつも店の前に行列ができている状態でした」

 

社会的には、70年代の初めごろまで、学生運動の熱気が駅前のそば屋を包み込むこともあった。

 

「父は、よく学生さんと機動隊がやり合う場面を見に行ったりしていましたね。

 

私が覚えているのは、店に来る学生さんは、とてもピュアな印象だったこと。貧しいけど、何事にも一生懸命。逆に今の学生さんは世間にも関心が薄いといいますか、昔より会話もぐんと減ってしまったのはちょっと寂しいです」

 

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