一方、中等症となると入院が必要になってくるケースが多いだろう。東北大学病院内科総合感染症科の児玉栄一先生はこう話す。
「ただベッドに横になって管理するだけでも、1日1万円はかかります。さらに経口の抗ウイルス剤・ラゲブリオやパキロビッドは5日間で約3万円強。酸素も必要な場合もあるので、10日入院では20万円以上(すべて3割負担)になる可能性があります」
重症化してICUの入院となれば、24時間体制で管理されるため、1泊100万円以上、10日なら1000万円近く医療費がかかる。
「しかし、高額療養費制度を利用すれば、1カ月の医療費の上限額(一般的な収入の家庭ならば約9万円)を超えた分は返金されます。ただし、月をまたぐようなら、上限額を2回分支払わなければなりません」(児玉先生)
さらに気になるのがワクチンの費用だ。前出の古川先生に聞いた。
「ワクチンに関しては、インフルエンザワクチンと同様に、公費助成があると3000〜4000円ほどになると推測します」
つまり、3500円前後のようだ。
ところが、現行のワクチンはオミクロン株に対応していない。
「重症化予防の効果は期待できますが、3回目や4回目の接種をしたのに、感染してしまった患者さんもいます。今後はオミクロン株対応型のワクチンに切り替わる見通しです。しかし、初期段階のBA.1対応なので、現在のBA.5にどこまで感染予防、発症予防できるのかは未知数です」(古川先生)
■検査控えがはやれば感染まん延の危機が
これまで全額公費負担だったことを考えると、5類になることで大きな出費となるのだ。児玉先生はこう懸念している。
「そのため、検査控えする人もいるでしょう。軽い症状だからといって出勤すれば、感染が広がるリスクが高まります。5類に引き下げても、当面はワクチンや検査を無料にしたり、入院患者に対しては無料にするなど対応し、段階的に自己負担額を引き上げていくことも検討していくべきでしょう」
一方、古川先生は、5類引き下げへのメリットもあるかもしれないという。
「医療現場の逼迫が続いていて、発熱していても、全員に検査ができない状況です。2類相当だと、発熱外来には発熱患者とそれ以外の患者の動線を別にするなど、基準が設けられており、コロナ患者を受け入れられる医療機関が限られます。ですが、5類になればそうした規制が緩和され、これまでコロナ患者を受け入れられなかったクリニックなどでも診察できるようになります。医療現場の検査体制にも余裕が生まれれば、重症化する前に対応することも可能だと考えます」
経済的負担が少なく、感染リスクを抑制できるルール作りが求められるのだ。