保険料の納付が困難になったら、まずは年金事務所に相談へ 画像を見る

先日、漫画家の小田原ドラゴンさん(52)が「銀行口座から2千万円以上のお金が“サシオサエ”という名目で抜き取られました」と告白し話題に。国民年金保険料の滞納(以下、国民年金滞納)による年金事務所からの差押さえだったという。

 

「国民年金滞納による差押さえ(強制徴収)は、ここ10年ほぼ右肩上がりに増えています。ただ、いきなり差押さえにはなりませんし、滞納者全員が強制徴収されるわけではありません。支払う能力があるのに、長期にわたって滞納している人が対象です」

 

そう指摘するのは、債務問題に詳しいアディーレ法律事務所の谷崎翔弁護士。

 

そもそも国民年金は、国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が被保険者(加入者)となる。現在、65歳までを納付対象にするという議論の真っ最中だ。

 

国民年金の滞納分が差押さえになるまでの流れは、次のとおり。

 

「滞納を続けると、まず電話や文書、戸別訪問などで『支払ってください』という『納付督励』があります。それでも支払いがないと、自主的な納付を促すための『最終催告状』が届きます」(谷崎さん、以下同)

 

2019年は14万2871件の「最終催告状」が送られた(日本年金機構の資料より・以下同)。

 

「これも無視すると『督促状』が届き、この支払い期限以降は、延滞金が発生します」

 

滞納期間が長くなるほど、延滞金も高額になる。

 

2019年に「督促状」が送られた数は8万9615件。

 

「その後、『差押予告通知』が届き、最終的に『差押』(強制徴収)となります。差押さえ件数は2012年に6208件、2013年は1万476件と年々増え、2019年には2万件を超えました」

 

冒頭の小田原ドラゴンさんは「20年近く未納で、数年前から“電話(納付督励)”があり、ある日を境に“封筒”が届くようになった」と語っている。

 

「1千万円以上の年収があり、連絡がないと目をつけられやすい。必ずしも差し押さえられた口座に入っている全額が取られるわけではなく、滞納分以上の預金が口座に入金されている場合には、滞納分を差し引いたお金が口座に残ることになります」

 

しかし、なぜ国民年金滞納者に対し、差押さえをするほど厳しくなっているのだろう。

 

「かつての社会保険庁による、ずさんな年金記録問題を覚えていますか? この社会保険庁に代わる組織として、2010年に発足したのが日本年金機構です。毎年公開している『業務実績報告書』には一貫して『保険料の負担能力がありながら保険料を滞納している、ほかの被保険者の納付意欲にも影響を与えかねない滞納者に対しては、強制徴収による対応を行う』という旨の記載があります。年金保険料を納めている人の、滞納者への不公平感を排除し、年金行政に対する信頼を確保するべく、徴収体制を厳しくしているのでしょう」

 

とはいえ、滞納者全員が差押さえの対象になるわけではない。

 

「たとえば2014年は税金控除後の年収が400万円以上で13カ月以上滞納している人が対象でした。これが2018年には300万円以上で7カ月以上滞納となり、年々増えています。一昨年と昨年はコロナ禍のため、差押さえ自体を自粛したり、一時的に要件となる年収が上がりましたが、今後また、年収300万円以上に戻ると予想されます」

 

差し押さえられるのは預貯金や給与などに限らないとも。

 

「競売にかけるなど手続きが煩雑なため、私の知る限り個人の滞納に関して事例はないようですが、自宅などの不動産、自動車も差押さえの対象となりえます」

 

そう話す谷崎さんのところには近年、国民年金滞納の相談に訪れる人が増えているという。

 

その事例を見ていこう。

 

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