■自己負担額の増加で治療薬を断る人も
5類に移行する際、厚労省は「最大で約6万4千の外来医療機関でコロナ患者を診る体制を目指す」としてきたが、今年3月27日時点でコロナ患者に対応している外来医療機関は約5万施設止まり。しかも、厚労省は今年3月末で公表を打ち切ったため、その後の増減は不明だ。
さらに、「コロナ治療薬などの自己負担が増えたことも拍車をかけている」と玉井さん。
政府は、5類移行後も続けてきたコロナ治療薬などの公費負担を今年3月に終了。
ラゲブリオやゾコーバといった重症化リスクが高い人に処方される治療薬の自己負担額は、3割負担の場合で約1万5千~3万円にも上る。
「ラゲブリオだと1割負担でも1万円弱ですから、年金暮らしの高齢者の場合『それならいらない』と断る方もおられます。当院では断られても、リスクの高い方には、ご家族も呼んで説明し、できる限り服用を勧めています」(玉井さん)
また公平さんも、こう続ける。
「5類移行後は、熱があっても検査を受ける人は減りましたし、そもそも行動制限がありません。
その結果、コロナに罹患していることを知らずに出勤や外出する方もいて、そこからリスクの高い方に感染を広げているのではないでしょうか」
では、リスクの高い方を守るためには、どんな対策が必要なのか。
「季節性インフルエンザの場合、感染者が増えてくると注意報や警報が出ますが、コロナはそれすらありません。せめてインフルエンザ並みの基準を作らないと、尊い命が失われ続けるでしょう」(玉井さん)
せめて感染者数の発表や、罹患者が医療にアクセスしやすい体制を整えるべきだろう。加えて、私たちが「感染しない、させない」ためには、従来どおり、公共の場所でのマスク着用や、体調が悪いときは外出を控えるといった基本的な対策も必要だ。