今年3月に現役を引退した元大関・琴欧洲勝紀親方(31)が30日、自身の自伝『今、ここで勝つために 琴欧洲自伝』の刊行記念サイン会を行い、それに伴い報道陣の取材に応じた。来たる10月4日の断髪式を前にまげを結っての最後の仕事となったこの日、12年の現役生活を終えて、今の思いを赤裸々に語った。
レスリングからの転身を決意し母国ブルガリアから来日した琴欧洲親方。その高い身体能力を生かした取り組みや“角界のベッカム”とも呼ばれた容姿から幅広いファンの人気をさらった。引退は去年の九州場所での怪我が大きな要因となったが、引退届けを出したときの思いは「やりきったという感覚だった」という。「横綱まで行けなかった悔しさはある」と打ち明けたものの「今度は僕が育てた力士が横綱になるところが見たい」と弟子たちに夢を託した。
そんな琴欧洲親方も来日直後は角界のしきたりに苦しんだという。日本語がまだ理解できない中で、上下関係を含めたくさんの決まりに適応しなければならず、「人間扱いされなかったですね。(上下関係は)ここまで厳しいものはない」と入門当時を振り返った。その上で「あまりにも強さと関係のないしきたりは変えたかった。でも、全てを変えてしまうのもいけない。根性論も必要です」と自身の指導方針を語る。「目標は弟子がファンの前で感動を与える相撲をとること」。琴欧洲親方の挑戦は続く。
(撮影/桑原靖)