[E:note]確かに沖縄はTシャツと短パンで生活できちゃいますものね(笑)。
普天間:でも、だからといって帰ろうとは思いませんし、それよりも、今でもそう思っていますけど、東京はたくさん刺激があって、どんどんいろんな人に出会うことができますし、発見が多いですよ。ただ、ときどき沖縄に帰って充電できているからいいのかもしれませんね。それに、私にとって東京に出てきて一番よかったなぁと思っているのは、沖縄のことが沖縄にいたときよりも大好きになったこと。沖縄で暮らしているときなんて本当に島のよさ、みたいなものに興味なくて、「海がキレイなのも当たり前さ~」。民謡が流れているのを聴いても、「これはおじぃとおばぁが唄っているさ~、昔から唄っているものでしょう」と、な~にもわからずに過ごしていたんですよ。だけど、やっぱり離れてからは故郷を思うことがすごく多くて、ちょっとホームシックになった時期もありましたし、私の生まれた沖縄はこんなにすばらしいものがあって豊かな島だな~と思えるようになったんですよね。沖縄に生まれてきてすごく誇らしく思えるし、昔から好きではありましたけど、よりはっきりと沖縄というものがしっかりと刻まれた感じがしています。それは本当によかったなぁと思います。いろいろ知らなかったことが多すぎて、改めて島のことをいろいろ調べるようにもなりましたしね。

07 [E:note]沖縄出身の歌手というイメージが先行して、沖縄音楽と一つに括られることに抵抗はありませんか?
普天間:そうですね、沖縄ブームが定着した今でもときどきそういったことはありますけれど、昔、ブームの初めのころは、イヤというより戸惑いましたね。たとえば、沖縄出身で歌を唄っていると言うと、「三線を弾くの?」、「民謡なの?」と言われることもありました。沖縄の歌のカテゴリーに入ることが、そういうふうにとらえられることもあるのです。私はとくべつ民謡をやっていたわけではないですし、沖縄の民謡は本当にすばらしいものがたくさんありますから、それは本当の民謡の方の歌を聴いて欲しいと思いますしね。それに、沖縄出身だからといって、沖縄を代弁しよう!などと、そんなおこがましいことは思っていませんから……。普天間かおりという歌い手とのギャップを説明するのも大変でしたし、果たしてきちんと伝えられたのかな? という意味では戸惑うことが多かったですね。

[E:note]何かの枠に入れようとするのは人の悪い癖ですよね。
普天間:もちろん、ライブでもCDで島の歌を唄っています。でもそれは、私が沖縄を代表してというのではなくて、逆に、世の中にはいっぱいいい歌があるから、そんな中で「自分の故郷にもこんなにいい歌があるんですよ」とよい歌を届けたいだけで。たぶん私は、洋楽で唄う曲も沖縄の歌も同じように「いい歌だから届けたい」と思います。やっぱりそういう歌って歌い継がれているし、それを私もちゃんと受け継いでみんなと共有したいのです。

[E:note]私の個人的な感想を言うと、普天間さんの声質や唄い方には、沖縄カラーはあまり感じません。
普天間:私のライブや音源は沖縄の楽器は入れずにふつうにみなさんがよく耳にするピアノやギターでの演奏で唄っています。最近でこそ沖縄の音楽が浸透して、ブームというよりももうみなさんの中に自然にあるからとてもいいのですけど、ブームのはじめのころは、沖縄の島の歌を唄うとき、「三線を使えばいいさ、なんで三線を入れないの?」と言われ、それが商業的な方法として入れたら?という人も多かったですし、聴く側もそういうイメージで聴く人もいましたから、それがイヤでしたね。三線でも何でも、沖縄文化のすばらしい部分を商売で色気づいて音源に入れる姿勢、それを私がやるのはイヤだったのです。わざわざ「沖縄」というものを入れる必要もなかったし、でもわざわざ拒否してもいない。そういう意味では、私の中に沖縄はしっかりありますから、それは何か? とあえて言えば、歌詞であったりメロディであったり、そこに注がれる想いというのはメンタルな部分なのですよ。子供のころからの生活の中で培ったおじぃやおばぁたちや周囲の人との触れ合い、自然に見えていた景色が教えてくれたこと。それが私の中の沖縄なので、そこで感じてもらえたらいいなあと思っています。

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