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最近、“現役バリバリ”で活躍している80歳以上の女性が目立ちます。「人生100年時代」ともいわれる今、年を重ねるほどに輝く秘訣は何なのか。素敵な大先輩の言葉に、大きなヒントがありました。“生涯現役”を実現するための50代の過ごし方ーー。

 

「OK、グーグル、今の気温は何度かな?」、「24度です!」。自宅のリビングに置かれた「AI(人工知能)スピーカー」と会話を楽しむのは、若宮正子さん(83)。

 

「ITは技術の進化が著しい世界。40歳を過ぎると自分の能力に限界を感じる人が多いのか『勇気をもらいました』と声をかけてもらうようになりました」(若宮さん・以下同)

 

昨年2月、iPhoneのゲームアプリ『hinadan』を開発。ひな人形を正しい位置に送るパズルを配信し、「世界最高齢の女性開発者」と時の人に。さらに6月、年に1度のアップル社のイベント「世界開発者会議」に、ティム・クック最高経営責任者(CEO)から、「どうしても会いたい」と招待された。

 

「もともと好奇心が旺盛で、何かを新しく始めるときも、『失敗したらどうしよう』とは考えないタイプ。興味を抱いたものはとりあえずやってみよう、失敗しても得られるものはあるはず。結果よりプロセスが大切なんです」

 

このhinadanアプリも、高齢者向けのスマホアプリがなかったことから、「ないなら自分が作ろう」と、近所の書店でプログラミングの本を買い、独学で始めた。

 

「教えてくれた先生は宮城におられて、無料通信アプリのスカイプなどを使って添削をしてもらいました。遠距離でのやり取りでもパソコンを使えば苦になりませんよ」

 

年齢を言い訳にして、あきらめることはしない。今年2月、アメリカ・NYの国連本部のイベントで「高齢者にはデジタルスキルが重要」と、英語で演説できたのは40代に少しかじった英会話のおかげ。

 

「英会話を始めていなかったら、国連でのスピーチも断っていたかもしれません。何が起こるかわからない。とりあえずチャレンジして、だめならやめればいいんです」

 

若宮さんは高校を卒業してから大手銀行で定年まで働いた。定年後は、介護が必要な90代の母と向き合う時間が増えた。

 

「家にいても、外の世界とつながっていたい」と考えたことが、パソコンを勉強したきっかけ。退職金で当時40万円ほどかけてシステムを一式そろえるも、最初は大苦戦。パソコン通信ができるようになるまで3カ月かかった。ネット上でおしゃべりする場のシニアサロン「メロウ倶楽部」に創立から関わり、世界が広がったという。

 

それからは、表計算ソフトのエクセルを使った「エクセルアート」で手提げ袋を作るなど、活動の幅は広がり、「シニアこそもっとITを使いこなすべきだ」と思い、全国を講演で飛び回る日々。多くの出会いやチャンスを呼び込んでくれた。

 

母の在宅介護は10年ほど続き、70歳のときに看取った。介護がなければパソコンに目覚めることもなかったと思うと、「何事も無駄なことはなかった」と振り返る。

 

読者世代の50代は、子育てや仕事などが一段落し、学び直しの時間が持てる絶好のチャンス。「自分から可能性を否定しないで」と、若宮さんはエールを送る。

 

「『難しいから』と敬遠しないで、ITのスキルを得ると、新たな世界が広がります。今後、AIの時代になるとプログラミング自体、AIがしてくれるようになるでしょう。そうなると技術力よりも、人間力、人生経験が豊かな人のほうが面白いものを作れると思うのね。これからの時代は、経験を重ねた人のほうが楽しめるんじゃないかしら」

 

定年後のことを“第二の人生”というが、人生はつながっていて、人はいくつになっても現役という。

 

「自分の人生も俯瞰できるようになったからか、楽しい思い出だけではなく、うまくいかない、つらいことも含めて、今までの経験は無駄ではないと実感しています」