「さんまが出るとあんまが引っ込む」といわれたのは江戸の昔から。それほど栄養たっぷりのさんまは8月中旬から出回り、9月にいちばん脂がのる。脂=太るという定説に反し、脂をたっぷり含んださんまはダイエットの味方でもある。ご自身もスラリと美しい管理栄養士の井出杏海さんに聞いた。
「摂取した脂肪を効率よく代謝するにはビタミンB2が必須です。さんまにはビタミンB2がたっぷり含まれているので、脂の代謝をよくしてくれるんです。また、さんまの身は良質タンパク質で低糖質なので、糖質制限ダイエット中の人でも安心して食べられます」
さらにさんまの脂自体に、素晴らしい効能がある。
「さんまの脂には血中中性脂肪を減らしたり、血液をサラサラにして血栓をできにくくするDHAとEPAという多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。これは動脈硬化やそれに伴う血管疾患の予防に有効とされているんですよ。さんまの可食部100gあたりDHAは1,600mg、EPAは850mgと大変豊富です」
脂は脂でも“いい脂”なので、積極的にとってもいいというわけだ。さらに、多価不飽和脂肪酸には、記憶力を上げるという素晴らしい効果があり、アルツハイマー病の予防効果も期待されている。血流をよくする働きもあるので、くすみがない明るい肌に導く美肌効果もあるという。
「ほかにもさんまには丈夫で健康な体づくりに必要な栄養素が多く含まれていますが、なかでも良質タンパク質は特筆ものです。さんまのアミノ酸スコアは100。これは『タンパク質を組成しているアミノ酸のバランスが100点』ということです。人間の皮膚はタンパク質で構成されているので、良質タンパク質を摂取することは美肌に有効ですね。さらにさんまにはコラーゲンが豊富に含まれています。コラーゲンは体内で吸収された後、ビタミンCの力を借りて再度コラーゲンに生成されます。そのため、コラーゲンはビタミンCと一緒に摂取する必要があるんです。さんまにレモンやすだちをかけて食べるのは、味だけでなく栄養の面でも理にかなっているんですよ」
さらに、女性に不足しがちな鉄分も豊富だ。
「さんまに含まれる鉄分は『ヘム鉄』と呼ばれ、野菜や海藻など植物性食品に含まれる『非ヘム鉄』より吸収されやすいので、不足しがちな女性には特におススメですね。鉄分には貧血予防、疲労回復、美肌効果があります」
ダイエットにも美肌にも、さらに貧血予防にもいいなんて、まさにオンナの味方だが、閉経後の女性にはさらに必要な栄養素もある。
「とかく不足しがちなカルシウムも豊富です。特に女性は閉経後に女性ホルモンの関係で骨がもろくなりやすいので、この時期は意識的にさんまを食べるといいですね。抗酸化作用があるビタミンA、ビタミンE、ビタミンDも含まれているので、老化予防にもつながります」
聞けば聞くほど魅力的なさんま。どのくらい食べるのがおススメ?
「さんまは魚の中では比較的カロリーが高め。いくらいい脂でも、取りすぎれば当然太ります。どんな食材も取りすぎは禁物ですから。さんまの適正量は1日に1尾です。1尾でも1日に必要なDHAとEPAがほとんど摂取できますよ」
1日1尾さんま生活で、才色兼備な秋を送ろう!