ねじりハチマキのご主人は井上修さん。今年で70歳。創業者の先代、江口堆義(たかよし)さんの時代から50年以上、この店で働いてきた。

「先代は戦前、広尾で食堂をやってたんだけど、戦火で焼けて三鷹にやってきて。何か新しい商売をやろうってことで、ラーメンを始めたんですよ」

創業昭和27年。ビルひとつなかった三鷹駅前の“三軒長屋”で「江ぐち」は始まった。ラーメン1杯30円。翌28年、山梨から上京してきた井上さんは“丁稚奉公”でお店に入る。

「住むところがあって、ごはん食べさせてもらって、盆暮れには着物の一枚ももらって。給料? あの頃そんなものはなかったですよ! 年寄りつかまえて聞いてごらん(笑)」 総武線の終電の駅、三鷹。当時は深夜2時まで営業し、銀座や新宿の夜の街で働いていた女性たちが流れてきたという。

「若かったからね。“ボーヤ”なんて言われて赤くなったり(笑)。やくざなお客さんも多かったね、昔は」

50年。先代が現場を離れ、昭和61年には現在の地下店舗への移転を経て、現在に至る「江ぐち」。何人もの従業員が来て去るなか、井上さんはお店に立ち続けてきた。 「やらざるをえなかったというか、みんな体こわしたり、辞めたりするなかで、気付いたら自分だけ残ってた感じ。そんなたいそうな話じゃないですよ」

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