数年来の再開発で、新しいビルが立ち並ぶ街へと様変わりした品川・大井町。昨年できたばかりという巨大な駅ビルの大型電気量販店。どこの駅前でも見かけるチェーンのカフェに居酒屋。「大井町」と聞いて、連想ゲームのように「競馬場」とイメージして改札を出ると、その真新しい風景に戸惑う。うっかりすると、駅前に今も残る下町風情を見落としてしまいそうだ。 駅東口からわずか徒歩1分、“東小路”と呼ばれる狭い横丁。一歩踏み込めば、そこは昭和の異空間。築数十年の立ち飲みやスナックの建物が、隣同士ギシギシと軒を連ねている。昔ながらの大井町が残る東小路。その入り口でパッと目をひく、新しい小ぎれいなお店。創業昭和26年の中華食堂「一冨士」だ。 基本の一品・ラーメン(580円)は、焦がしネギが特徴の醤油味。あっさり、やさしい口あたりの中にも、焦がしネギの風味とダシの後味が残るスープ。中細の平打ち麺は、コシとやわらかさのバランスがとてもよく、スープの馴染みは勿論、湯気まで逃さないアツアツ感が絶妙。味そのものは懐かしいはずなのに、新鮮な“できたて感”が味をきわだてる、イキのいいラーメンだ。