その鮮やかなスタイリングと、一度食べたら忘れられない味で話題のお弁当“チオベン”。おいしくて、インスタ映えする“奇跡のお弁当”に芸能界でもファンが続出中――。
「一生のうちに、1つのお弁当箱にこれだけたくさんのおかずを詰めることなんて、ほとんどの人はないと思います。これは現実的ではないんです――」
自らの作る「チオベン」をこう語るのは、料理人の山本千織さん。チオベンとは、テレビや雑誌の撮影現場にロケ弁として登場するや、その味と美しいスタイリングに感銘を受ける女優やモデルが続出し、マスコミから広がった、代々木上原の弁当店「chioben」の話題のお弁当だ。
4月には2冊目のレシピ本『チオベンの弁当本』が発売。そしてこの夏、コトラボ主催の料理教室「チオベンを作ろう」を開催したところ、受講者たちは、「同じようにできた!」と大喜び、ほとんどの人はその場で食さず、「家族に見せたい」「あとでインスタグラムにアップしよう!」と大切にテークアウトしたという。
「私は毎日違う人に向けて作っているので、極端なことをいえば同じメニューでも大丈夫ですが、毎日同じ人に作るとそうはいきませんよね。だから、品数は十数種類もなくていいんです」(山本さん・以下同)
というように、最近山本さんが家庭向けに提案するお弁当は、定番のおかずで品数を抑えながらも、独特のルールに基づいて美しさ&おいしさを追求した構成になっている。チオベンのおいしさの極意は次のとおりだ。
■豆板醤・カレー粉・クミンで個性を
家庭の調味料は、砂糖、醤油、だし、みりん、酒が基本。だが、「春巻きやコロッケといった普通のメニューが、ひと味違うおいしさ」になるのがチオベンの味。いつもの調味料に加えて、豆板醤、カレー粉、クミンで味が個性的に。チオベンでは、軽くて優しい米油を重宝している。
■“揚揚酢酢”はNG
肉を揚げたなら、魚は焼くか煮る。肉を焼いたなら、魚を素揚げに。酢の物は2品かぶらないように——。お弁当作りにルールがあると、何を作るか迷ってしまうことも減らせる。
■野菜は“がっつり系”で
野菜はたっぷり取れるように、生ではなく、煮たり、炒めたりする。火を入れたほうが野菜の量をがっつり取れるので栄養面でも◎。
最後に、チオベンをおいしく仕上げるのは、何より山本さんの“お弁当作りを楽しむ”姿勢だ。
■「まぁ、いっか」のさじ加減
分量などにこだわりすぎず、自分のさじ加減で。お弁当は、家庭の味を生かすもの。「この前と同じ味にならない〜」なんて悩まずに。
■「揚げ春巻き」でおいしくスッキリ!
残り物の食材をなんでもクルクル楽しく巻いて、冷蔵庫の掃除ができちゃう「揚げ春巻き」をチオベンでは多用。お弁当用に揚げて入れて、残ったら冷蔵庫に入れておけば夕食でも大活躍。
■「その日のうちに消えてしまうもの」と考える
お弁当はその日のうちに胃袋に消えてしまうもの。サイクルが早いものだから、またいいお弁当を作ろう! という意欲をもって毎日楽しく向き合いたい。
「教室で『チオベンそっくりにならないんです〜』と悩まれる方もいるけれど、私と同じにする必要はないと思います。それぞれのご家族好みの“家庭の味”があっていいんです。お弁当はその日のうちに消化されるもの。どんどん作って、どんどん食べてもらって、また作って……とにかく楽しんでほしいですね」