10月1日の増税以降、外食産業の冷え込みが続いているが、ロイヤルホスト(以下、ロイホ)の快進撃が止まらない。10月の売上高は前年比で100.1%をマークしている。
その人気を示すかのように、SNSでも“ロイホの口コミバズ”が続いている。2019年2月には「苺のブリュレパフェ(950円)」が【史上最高に美味しすぎる】としてTwitterやネットニュースなどで話題となった。また、9月26日からスタートした「渋皮栗とほうじ茶のブリュレパフェ(1,078円)」や「蟹と海老のサンドイッチオマール海老のクリームスープ(1,738円)」も、そのクオリティの高さが賛辞を受けている。Twitterでは、【もはやファミレスではない】とまで言われるほどの人気だ。
なぜ、ロイヤルホストはこれほどまでにSNSで愛されるのか? なぜ、「ロイホなう」と呟きたくなるのか。その背景を追った。
【理由1】自宅で食べられ“ない”メニュー。ツイートしたくなるほど高いコスパが魅力
ロイホのハッシュタグを追いかけると、頻繁に登場する言葉がある。「ファミレスとは思えない高級感!」「高いけど美味しかった」など、食材の良さを褒めるものだ。
ロイホを運営するロイヤルホールディングスは、2018年から「日本で一番の質の高い“食”&“ホスピタリティ”グループ」と宣言し、真鯛や黒毛和牛などの高級食材をグランドメニューに導入。全てのメニューを、コック帽を被ったシェフが調理している。
スイーツもかなり本格的だ。話題のブリュレパフェは、カリッとしたブリュレを叩き割ると、ほどよい甘さの栗と濃厚ほうじ茶のアイスが登場。繊細な見栄えと味わいは、フルーツパーラーなどの専門店のようだ。
ここにロイホの強みが存在する。同じファミレスと比べれば値が張るが、実際のホスピタリティと食事を体験すると「本格レストランや専門店に行くより割安」と実感できる。この満足感が、顧客のシェアを促す要素の一つだろう。
【理由2】店舗数が少“ない”。絶妙なレアさでシェアしたくなるブランドへ
ロイヤルホストの店舗数は、217店(2019年1~9月)。他ファミレスよりレアキャラ感がありつつ、体験者が決して少ないわけではない。また、ニュース性もあるため情報番組やニュースメディアのネタとしても通りやすそうという、絶妙な店舗数である。
他の“バズる外食産業”と比べても、ロイホのレアさは魅力的だ。例えば全国のどこにでもあるマクドナルドは、食べ比べしたくなるような味違いのバーガーを多く出すことで、空腹を満たすことに「楽しさ」という価値を付与している。
対して店舗数や出店エリアの都合で「食べたくても気軽に来店できない」ロイヤルホストや静岡県のハンバーグチェーン「さわやか」は、来店自体にシェアしたくなるような希少さがある。
「おいしそう、いつか行ってみたい」という心を醸成することは、どんな味付けよりも効果的なエッセンスなのだ。
【理由3】安く“ない”。嫌味っぽくならない「庶民の贅沢」にぴったりの値段感
ロイヤルホストが勝ち取った「高級ファミレス」というポジションは唯一無二のものである。SNSが誕生してもう10年以上経過し、多くのユーザーが“自慢話をしない”という「SNSでのお作法・処世術」を把握してきた。そんななかでロイホはホテルや専門店のディナーと違い、嫌味なく高級で「庶民の贅沢」を気兼ねなくシェアできる。
ロイヤルホストには幼少期に両親に連れてってもらって、ワクワクした「レストラン」像を復活させようという誠意が感じられる。そのため、いつも気持ちよく来店してしまう。毎日の地道な努力が、消費者にしっかり届いているのかもしれない。
【PROFILE】
渥美まいこ
食トレンド研究家。レストランからコンビニ、家庭料理やミールキットまで。食べ物全般についてマーケティング、文化、社会学の視点から切り込んでいるnoteやTwitterが人気。
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