多様化するおせち最前線 パン入り、肉だけ、ふわふわ食感も

「おせち」の多様化が進んでいる。楽天の「おせちに関する意識調査」によると20~60代の男女のうち、令和初となる2020年のお正月に「おせち料理を食べる予定」の人は61.2%。そのうちの64.7%が、おせちを「購入する」と回答した。内訳としては「購入したおせち料理と、作るおせち料理を組み合わせる」人が28.8%、「重箱入りおせち料理を購入」する人が20.1%、「単品のおせち料理を購入」する人が15.8%だった。ひとくちに“おせち料理”といっても、家庭によって食卓への取り入れ方にかなりの違いがあることがわかる。

 

また、おせちの購入経路も多様化している。従来の購入場所は百貨店などに限られていたが、近頃では地方の食品メーカーや料理店がおせちのネット通販に乗り出している。レシピ動画サービス「クラシル」も、今年から「クラシルおせち」のネット通販を開始し、完売させた。データ分析をもとに同社が探り当てた、現代のおせちの在り方を探るため、広報担当者に話を聞いた。

 

■ユーザーの声から分析「新おせち」

 

今年のおせち料理の傾向について、クラシルの広報担当者はこう語る。

 

「『伝統を守りつつ、楽しみながらおせちを食べたい』というニーズが増えています。今回のクラシルおせちでも『合鴨スモーク』や『濃厚うにチーズ寄せ』など、お酒のあてになる料理も入れました」

 

重箱入りのおせちにバケットなども取り入れたバラエティ豊かなおせちが、好評を博している。

 

2020年に向けて発売された各社のおせち料理のラインナップを見ると、料理のバラエティ化が顕著だ。ローソンストア100からは食べきりサイズで一品ずつ購入できる「100円おせち」が発売。楽天は「肉だけおせち」「蟹だけおせち」など一つの食材で埋め尽くしたお重箱が発売され、ニュースなどで話題となった。おせち料理は今や食卓のメインではなく、他の料理と組み合わせて食べる“おかず”としての需要があるようだ。

 

■手作りおせちにも変化の兆し

 

おせち料理を重箱に詰めるスタイルは江戸時代末期から始まったといわれている。“幸せを重ねる”“福が重なる”という意味があるほか、蓋をすることで保存ができるという実用的なメリットもあった。しかし近頃では、重箱ではなくワンプレートで食べる人も増えてきている。前出のクラシル広報担当者はこう語った。

 

「昨年、ワンプレートおせちの盛り付け方についての動画を投稿したところ、通常の料理の盛り付け動画の2倍ほどの再生回数を記録しました。背景としては親戚の集まりなどが減り、少人数で新年を祝う食事として、おせちを食べる人が増えていることがあります。ワンプレートだと普段から使う小鉢などを活用し華やかに仕上げることができるので、お重のない家庭でも作りやすいという声もあるようです」

 

■栗きんとんには2種類の味があった

 

そんなおせち料理の各品には、縁起を担ぐための願掛けが込められている。例えば黒豆は“黒く日焼けできるほどマメに働けるように”という思い。また鯛の姿焼きは、“めでたい”のごろ合わせ。そして車エビには“海老のように腰が曲がるまで長生きできるように”という願いが掛かっている。

 

さらに黄金のような見た目から“金運上昇をいざなう”といわれているのが、栗きんとんだ。クラシルでは、日本人が好む栗きんとんの味を分類したという。

 

「ユーザーの方の声を分析してみると、 栗やさつまいもの素材本来の自然な甘みをお好みの方と、甘露煮のようにしっかり甘いものをお好みの方、大きく2タイプに分かれました」

 

また伊達巻は巻物のように見えるため、“知識が増える”という願いが込められている。クラシルの広報はこう語る。

 

「ダシがはいったしっとり系の伊達巻、はんぺんなどをつかったふわふわ系の伊達巻が一般的には人気のようです。クラシルの伊達巻レシピに投稿されているユーザーからのコメントでは、“ふわふわ食感”と“甘さ控えめ”の2ワードを含んだ投稿が多くありました」

 

伝統料理の味がデータにより洗練されていく、そんな時代が訪れているようだ。

関連カテゴリー: