「今の日本人は、呼吸が浅くなり、酸素不足に陥っています。生活スタイルの西洋化が日本古来の呼吸法を失わせ、心身に悪影響を及ぼしているのです。今こそ伝統の呼吸法『密息』とともに、穏やかな心と体を取り戻しましょう」

 

そう語るのは、虚無僧尺八演奏家の中村明一さん。ある虚無僧寺で巡りあった密息により、「集中力が劇的にアップして、心はとても穏やかなのに、全身の感覚が研ぎ澄まされていきました。世界も鮮明に見えてきたのです。一日がまるで違うものに感じられる」ようになったという。

 

密息の最大の特徴は、呼吸の際に横隔膜を深く上下させること。これによって、大量の息が吸えるようになるという。じつは、横隔膜を上下させるのは腹式呼吸も同じ。密息の場合は、さらに腰を落とし、骨盤を後ろに倒すことがポイントだ。

 

「もともと日本は、足元が悪い国。山に囲まれ、雨も多く、地面もぬかるんでいます。その中で農耕をしてきた日本人は、転ばないように膝を曲げ、腰を落として生活するのが基本でした。すると、骨盤を後ろに倒し、おなかを膨らませた姿勢のほうが楽なんです。この姿勢で呼吸をすると、自然と密息になります」(中村さん・以下同)

 

骨盤を立てたまま呼吸をする腹式呼吸をきちんと行うには、強靭な表層筋が必要で、元来、体格のよい西洋人だからできるものだという。結果として、現代の日本人の多くは、胸式呼吸に頼ってしまうことに。「しかし、これでは横隔膜が上下しないので、体内の換気が十分にできない」。それでは、 密息を続けることで、どんな効果を実感できるのだろうか?

 

「新鮮な酸素が全身に行き渡ることで、新陳代謝が促進され、肌ツヤがよくなります。自律神経のバランスも整うので、循環器系や免疫機能、内分泌系の働きもアップ。脳も覚醒し、体中にパワーが満ちあふれます」

 

【家庭でできる!「密息」の手順】

1 胸を張り、いわゆる「よい姿勢」で椅子に浅めに腰かける。両手はももの付け根に置く。

 

2 仙骨(尾骨の上にある逆三角形の骨)を座面につける要領で、骨盤を後ろに倒す。このとき、自然と背中が曲がる。

 

3 骨盤を倒した状態のまま、曲がっている背中をまっすぐ伸ばす。首の付け根を前に出す感じで。

 

4 下腹を膨らませたまま、口からゆっくり息を吐く。このとき、横隔膜を持ち上げるよう意識して。次に、おなかを膨らませたまま、鼻からゆっくり息を吸う。このときは、横隔膜を下げるよう意識する。外から見える筋肉はいっさい動かさず、横隔膜だけを上下させて呼吸するようにする。

 

※慣れるまでは肩が疲れるかもしれませんが、1日30回を目安に行いましょう。

関連カテゴリー:
関連タグ: