「最近、唾液にまつわるさまざまなニュースが報じられています。アメリカでは先月、両親の唾液から遺伝情報を解析し、子どもの目の色や病気のリスクを予測する手法に特許を与えられたばかり。唾液中の成分を調べることで、うつ病かどうかがわかる検査方法も、登場し始めています」

 

そう話すのは順天堂大学教授の小林弘幸先生。実は唾液は血液の成分から作られているため、血流と同じように健康と深く関わっているという。

 

「まずは消化作用。アミラーゼという酵素がでんぷんをブドウ糖に変え、胃腸の負担を軽くすることはご存じの方も多いと思いますが、このアミラーゼの値が高い人ほど、血糖値も低く抑えられます。これはでんぷんを速やかに分解できるため、インスリンの分泌も早く、血糖を細胞に取り込みやすい状態が続くから。もちろん、糖尿病の予防につながります」(小林先生・以下同)

 

さらに、注目なのが抗菌・自浄作用だ。

 

「口の中にはたくさんの細菌がいますが、唾液中のラクトフェリンやリゾチームなどが、その増殖を防いで口臭や歯周病を防いでくれるのです。また、ラクトペルオキシダーゼという成分は発がん性物質の働きを抑える作用も!ほかにも、消化管粘膜の潰瘍を予防する成分や神経細胞の修復を促す成分、それに、骨や肌、髪を丈夫にする成分も含んでいるので、アンチエイジングにも関係しています」

 

緊張すると口の中がカラカラになるが、これは血流と同じく、唾液も自律神経の支配を受けているから。副交感神経が活発でリラックしているときほどサラサラな唾液がたくさん分泌され、先に挙げた健康効果が発揮されると小林先生はいう。

 

「交感神経が優位なストレス下では、唾液量全体が減少。しかも、このとき分泌される唾液はネバネバしているので、口の中が乾くのです。すると虫歯や歯周病になりやすくなるうえ、食べ物を飲み込むことも大変に。心配事があると食べ物が喉を通らないというのは、唾液の分泌とも関係しているんですね」

 

加齢とともに副交感神経の働きは衰えるうえ、唾液腺の働き自体も衰えるので、中高年はどうしても口の中がネバつきがちに。では、サラサラな唾液をたくさん出すためにはどうすればいいのだろう?

 

「まずは水分補給。なんと唾液は1日1〜1.5リットルも分泌されますが、その99%は水分。お水を飲めば胃腸の蠕動運動も刺激され、副交感神経も活発になるので一石二鳥です。そして、食事のときはできるだけよくかむこと。かめばかむほど唾液腺が刺激され、分泌量が増加します」

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