「日本の歯科では、歯科インプラントの技術がすでに定着しています。患者さんの間でもすっかり確立した治療と思われています。ところが、近年、施術を受けた患者さんの間でさまざまな問題が出ていることがわかってきました」

 

こう語るのは’14年10月『歯科医師100人に聞いた「インプラントのメリット・デメリット」』(日本歯科新聞社刊)をまとめた水谷惟紗久さん。インプラントは、虫歯や歯周病、事故や腫瘍といった理由で歯を抜くことになったとき、顎の骨に穴を開けてチタン(合金の場合もある)製の支柱を埋め込み、その上に人工の歯(上物)をつけて修復する技術だ。日本では40年ほど前から広まってきた。

 

いまや一般的な治療といわれるインプラントで、なぜトラブルが続出しているのか?

 

’13年に日本歯科医学会が289人の歯科医を対象にとったアンケートでは、インプラント治療でトラブルを経験したことがある医師が約60%。うち約25%が重篤な偶発症を経験しているという驚くべき数字が出た。また、’12年、同会が423人の歯科医にとったインプラントのトラブル調査では、その内容として「人工歯の破損」、「インプラント周囲炎」、「インプラント体の脱落」などが多くを占めていた。

 

「本来、インプラントは顎の骨に穴を開ける口腔内での外科手術。歯科医にきちんとした技量(技術、知識)が伴っていることは最低条件です」

 

そのうえでトラブル続出の最大の要因は「施術を受ける患者さんへの説明不足」と水谷さんは話す。最低1本10万円から50万円以上という高額な自由診療であることも相まって、インプラントは万能であると患者は思いがち。しかしインプラントはじつは万能ではない。そのリスクを水谷さんは次のように解説する。

 

【歯根膜がない】

「本来、天然歯と骨の間には歯根膜があって、過度に硬いものをかんでしまったとき、これは無理、と顎の運動を制御するセンサーや、負担を軽減するクッションの役目をしています。現状、インプラントには歯根膜の機能がありませんから、今まで食べられなかった硬いものがかめるからといって調子に乗ってしまうと、顎や向かい合った歯に、過度に負担をかけてしまうこともあります」

 

【メインテナンス怠るとインプラント周囲炎を発症する】

「高血圧や糖尿病の人は手術中の事故、予後不良などのリスクがあり、本来は症状を改善させてからインプラントを検討すべき」

 

また、インプラントにした場合、3カ月から半年置きに、歯科医院でインプラント周囲炎予防のためのケアをしてもらうことが望ましいという。

 

「ケアを怠ると、インプラント周辺が炎症を起こし、脱落などの原因になります」

 

【喫煙者には不向き】

「喫煙もインプラント周囲炎の原因のひとつ。これについては歯科医師から説明があるはずですが、インプラントにしたら禁煙が基本です」

 

【万一、インプラントを抜くことになった場合、処置が大掛かりになる】

「高齢になってメインテナンスができなくなったときなど、インプラント本体を取り去る必要が出てきます。このとき、埋まっているインプラントのメーカーがわかれば専用の器具で比較的簡単に抜けるのですが、メーカーが不明でしっかり埋まってしまっていると、大掛かりな手術になることがあります」

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