(写真・AFLO)
「腎臓というのはけなげな臓器なので、よっぽどいじめない限りは症状が出てきません。数十年かけてじわじわと悪くなり、最後の半年だけ症状が出て、いきなり透析になってしまうということも少なくない。早く異変を察知して、腎臓をいたわりましょう」
こう語るのは、秋津医院(東京都品川区)の秋津壽男院長。女性は40代以降から女性ホルモンの分泌量が減ることで、それまでと同じ生活を続けていても高血圧や肥満になりやすくなる。そして、高血圧や肥満が腎臓に負担をかけていくことに……。腎機能が加齢とともに衰えていった状態を「慢性腎臓病(CKD)」といい、罹患者は年々増加。いまや成人の8人に1人が、CKDともいわれている。
「これはわりと最近生まれた概念で、重症度は血液中のクレアチニンという数値と年齢によって算出されます。ただ、年齢の要素が大きく、高齢者になれば全員がCKDともなりかねないので、個人的には若干病気の間口を広げすぎているのでは、と思うところも。とはいえ、CKDを放置すれば腎不全になってしまい、透析か移植しか選択肢がなくなってしまいます。できればCKD初期の時点で食い止めたいものです」(秋津先生)
また、腎臓がん患者数も増加傾向にあり、腎・尿路(膀胱除く)がんに診断されている人(推定罹患数)は’75年には1,896人だったのが、’11年には2万3,082人と10倍以上に(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)。定期検診ももちろん大事だが、高血圧や肥満のほかにも日々の生活には腎臓病のリスクを上げるNG習慣が潜んでいるという。そんなNG生活習慣を秋津先生が教えてくれた。
【水分を取らない】
トイレに行きたくなると困る……と、水分を取らずにいると、腎臓は脱水を解消するために尿を濃縮して、水分を再吸収する。このとき腎臓に負担がかかってしまう。水分補給はこまめにおこなおう!
【大量の飲酒】
直接的な因果関係は不明だが、飲酒は腎臓病のリスクになることが統計的にも明らかになっている。アルコールそのもの、高カロリーなつまみなどさまざまな要因が考えられているので、お酒はほどほどに。
【揚げ物大好き】
炭水化物を多く含むいもなどを高温調理することで発生する、アクリルアミドの発がん性が指摘されている。厚生労働省では、揚げ物や脂肪食の過度の摂取は控え、バランスの良い食生活を推奨している。
【喫煙】
体に入った異物は、肝臓が分解した後、腎臓が尿と一緒に排出する。いわば腎臓は「最終廃棄物」が通る場所。体に害がある成分が通れば、当然腎臓に負担がかかる。たばこの害はいうまでもない。
【鎮痛剤の常用】
昔の鎮痛剤には腎毒性という副作用があった。現在は副作用の少ない鎮痛成分に変わってきているものの、相性が悪ければ腎臓が悪くなることも。本当につらいときはともかく、「なんとなく飲む」ことは控えよう。
生活習慣ではないが、妊娠高血圧症候群の既往がある女性は、40歳を過ぎてから高血圧や腎障害を起こす可能性が高い。心当たりがある人は、ほかの習慣を繰り返さないよう、とくに注意を。