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手の湿疹が、もう何カ月も治らない。洗剤のせいかと思ったけど、手袋をしても変わらない。そういえば、最近疲れもたまっているみたい……。

 

「その症状、知らず知らずのうちに腸の壁に炎症が起きる『リーキーガット症候群』かもしれません。リーキーガット症候群は、便秘や下痢だけでなく、頭痛や喘息、うつ病、認知症など一見、腸と関係なさそうな病気の一因となります。子供から大人まで誰もがなる可能性があり、近年、大人のアレルギーや喘息が増えているのも、これが原因の1つといわれているんです」

 

そう語るのは、内科医で予防医学・栄養療法を専門とする関由佳先生。リーキーガット症候群は、アメリカでは10年以上前から、全身の不調の原因になるとして問題視されていた症状。日本でも腸内細菌の重要性が一般的に知られるようになり、注目されている。

 

「腸は外の世界から入ってきた食物などの通り道。つまり、体の内側を守る外壁の役目を受け持っています。そのため体内の免疫細胞の7〜8割が腸粘膜に存在しています。腸粘膜の細胞は、正常ならきれいに一列に並んでおり、体に必要な栄養素やミネラルを取り込み、ウイルスや毒素、水銀などの有害な物質、アレルゲンを締め出してくれます。しかし、腸内細菌のバランスが崩れると、腸粘膜の細胞の結合が緩み、その隙間から有害な物質が漏れるように血液中に入りこみます。そもそも、リーキーガットという英語の名前は、日本語で『リーキー=漏れる』『ガット=腸』という意味。まさにこの腸内の状態を表していますね」

 

有害物質が細胞の間から侵入すると、腸粘膜の免疫細胞が反応して抗体を作り、有害物質と結合する。抗体は、いわば攻撃対象の目印となる旗のようなもの。抗体と結合した有害物質が血流に乗って全身を巡り、一カ所にたまると、免疫細胞が目印をめがけて攻撃を始める。それが、炎症などの形で症状として現れるのだ。

 

「たとえば、皮膚にたまれば湿疹、関節にたまればリウマチ、脳神経にたまればうつ病という形で現れます。ほかにも慢性的な疲労感やアトピー性皮膚炎、花粉症、鼻づまり、物忘れなどもリーキーガット症候群が一因となっている可能性があります。腸壁がしっかりト有害物質を締め出していれば、このような免疫反応は起きにくいのですが、リーキーガット症候群により大量に有害物質が侵入すると、免疫が過剰に反応してさまざまな症状を引き起こすのです」

 

腸内細菌のバランスの乱れがリーキーガット症候群を招くというが、その原因は?

 

「抗生物質の服用で腸内の善玉菌が減少したり、ピルなどのホルモン剤の長期的な服用で女性ホルモンのバランスが崩れると、善玉菌が増殖して腸内細菌のバランスが乱れます。悪玉菌のエサとなる砂糖たっぷりのスイーツを頻繁に食べたり、パンや丼などの炭水化物メインの食事をしていても悪玉菌が増えてしまいます。とくに精製された砂糖や小麦は悪玉菌の大好物。悪玉菌は腸内でガスを発生させるので、おなかがいつも張っている、おならやげっぷがよく出るという人は要注意です」

 

慢性的な不調に心当りのある人は、専門の医師に相談しよう。

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