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「体中に張り巡らされた毛細血管は、いわば人体でいちばん大きな臓器です。しかし、動脈や静脈が年を重ねても数が変わらないのに対し、毛細血管は加齢とともにどんどん減ってしまいます。女性の場合は40代ごろから衰え始め、60代では20代に比べて、約4割も減ってしまうのです」

 

そう語るのは、ハーバード大学やパリ大学の医学部客員教授として、国際的に活躍中の根来秀行先生。ただでさえ冬は寒さのために血管が縮まり、血流が悪くなりやすい季節だが、毛細血管が衰えていては、老化も加速するいっぽう。頭痛、胃痛、手足の冷え・しびれなど、全身に不調が生じるだけではなく、肌荒れ、抜け毛や白髪が増えたりと、見た目にも悪影響を及ぼすという!

 

そもそも毛細血管とは、名前のとおり、直径0.01ミリほどの超極細。肉眼では見えないぐらいの細さだが、全身にくまなく張り巡らされている。

 

「『人は血管とともに老いる』という有名な言葉がありますが、いま、世界の最先端医療が注目しているのは毛細血管です。すべての血管のなかで、毛細血管が占める割合は99%。全身の血管のほとんどを占めているのです。人間の体を構成する60兆個もの細胞は、すべて毛細血管から0.03ミリ以内に存在しています」

 

毛細血管の働きは主に、「栄養素や酸素を各細胞に届ける」、「エネルギーを作る過程で発生した二酸化炭素や老廃物を回収」、「免疫細胞を必要な場所に届ける」、「分泌されるホルモンを運搬」、「体温調整」の5つ。こうした5つの働きを持つ毛細血管は、生命の営みの最前線を担っているのだ。

 

根来先生は「日ごろの心がけで、毛細血管を増やすことは可能」だという。毛細血管を増やすポイントは、血流を増やし、また、血液の流れるルートを作ってあげること。そのためには副交感神経の働きを優位にすることが重要。こうすることで毛細血管に血液がスムーズになるようになるという。そこで、まず取り入れたいのが「根来式腹式呼吸法」だ。

 

「副交感神経の働きをアップさせるためには、呼吸法が大事になります。横隔膜には副交感神経のセンサーがあり、息を吐くときに反応します。そこで、息を吸う時間の倍の時間をかけてゆっくり息を吐きましょう。割合は『1:2』です。特に効果的なのは10秒吸って20秒吐く、『10:20の呼吸法』。複式呼吸を意識すると、横隔膜がよく働きます」

 

1セット30秒で、できれば10分以上。ある程度まとまった時間が必要になるため、就寝前がおススメだ。また、根来先生が提唱する多くのメソッドの中で、副交感神経の働きをアップさせ、冬にぴったりなのが入浴法。ポイントは次の5つ。

 

【1】忙しい夜ほど湯船に

 

「シャワーだけですと、局所的にしか体を温められないうえに、水圧で交感神経が優位になってしまいます。10分でもいので湯船につかったほうが、副交感神経が刺激され、寝付きもよくなります」

 

【2】時間は寝る1時間前、ぬるめがベスト

 

「寝る直前に熱いお風呂に入ると、やはり交感神経が刺激されてしまいます。入浴は『寝る1時間前にぬるめの温度にゆっくり』が、副交感神経を刺激するためにはベストですし、毛細血管にも血液が行き渡ります。お湯の温度の目安は、冬なら38〜41度ですね」

 

【3】シャワーでリンパを刺激

 

「リンパは血液中の水分が、毛細血管の壁からリンパ管ににじみ出たものです。リンパ管は全身に網の目のように張り巡らされていて、血中の老廃物を回収し、体外に排出します。ボディ洗浄とシャワーにより刺激することで、リンパの流れをスムーズにすることは、毛細血管の働きを活性化することにもつながります」

 

【4】膝裏マッサージで血流とリンパをダブルケア

 

「湯船につかり、膝の裏にある膝窩リンパ節をゆっくりほぐすようにマッサージする。そして、ももから膝、さらに膝下へ、リンパ液を流すためにやさしくなでる。こうすることで、むくみがとれ、肌にハリも出てきます」

 

【5】泡のお風呂で毛細血管はさらに広がる

 

「湯船でゆっくり温まると、一酸化窒素が血管の内皮細胞から分泌され、全身の毛細血管がゆるみます。微細な泡の刺激を受けるとさらに効果的です。炭酸系の入浴剤などを取り入れてみるのもいいでしょう」

 

この入浴法に、前述の1:2複式呼吸法を組み合わせることで、リラックス効果をより高め、毛細血管への血流をキープできるそう。

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