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身寄りがなく、相続する人もいない遺産は、国のもの--。最近、国庫に納入される遺産が増えている。

 

「身寄りのない方が財産を残して亡くなると、弁護士らが『相続財産管理人』となり、遺産の整理と相続人捜しを行います。それでも相続人が見つからず、国のものとなった遺産が、’15年度には400億円を超えました。これは、’05年からの10年間で2.5倍に拡大とのことです(「日本経済新聞」4月16日付)。また、遺産が30万~100万円以下の場合は、多くの自治体で相続財産管理人は立てず、自治体が保管します。政令都市と東京23区を対象にした『朝日新聞』の調査では、こうした引取手のない遺産は、11億4,200万円も積み上がっていることが判明しました」

 

こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。先日発表された「生涯未婚率」は、男性が23.37%、女性が14.06%と、過去最高を更新(’15年・国立社会保障・人口問題研究所)。相続する人がいない遺産は、今後、ますます増えていきそうだ。国に納入されるくらいなら、誰かにもっと価値ある使い方をしてほしい――そんな思いを抱く人が増えたことで、ある手続きが注目されていると荻原さんは言う。

 

「最近は、法定相続人以外の個人や団体に、遺産を贈る「遺贈」が注目されています。もともと、相続できる兄弟姉妹がいない『一人っ子のおひとりさま』の場合、その遺産は国のものになってしまいます。それなら、遺言書を作成し、自分の生きた証しを寄付という形で残したいという方が増えているのです。また、兄弟姉妹がいても、老後の面倒を見てくれた知人や、お世話になったNPO法人などに遺産を贈りたいという方も、増えているようです」

 

NPO法人「国境なき医師団」のアンケート調査によると、将来大きな資産を持っていたら「遺贈したい」または「遺贈してもよい」と答えた人は、’14年の60.6%から、’16年には67%に増えている。

 

「実際の遺贈額も、’12年の1億4,000万円から、’16年には8億3,700万円になり、4年間で約6倍に増えています。遺贈は、NPO法人や慈善団体などのほか、大学や特定の個人にもできます。興味のある方は、日本財団の『遺贈寄付サポートセンター』や、弁護士らでつくる『全国レガシーギフト協会』の相談窓口にお問い合わせください」(荻原さん)

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