大盛況のうちに終わった平昌オリンピック。多くの選手が活躍した一方で、こんなエピソードもあった。フィギュアスケート女子の長洲未来(24・米国)は、五輪女子史上3人目となるトリプルアクセルを成功させ、団体銅メダルに輝いたが、そのジャンプ以上に、内股に見えたタトゥーのようなものに、「あれはいったい何?」と、注目が集まったのだ。
それはキネシオテーピング療法で使われる「キネシオテープ」のことだ。アスリートの間での人気は高く、リオ五輪で、女子団体銅メダルに輝いた卓球・福原愛(29)も、ピンクのテープを足に貼っていたことがあった。
筋肉に直接テープを貼ることで、疲労した筋肉をサポートしつつ、最大限のパフォーマンスを引き出すように開発されているが、実はこのキネシオテープ、スポーツ選手だけでなく、一般の人にとっても非常に有効なテープなのだ。
キネシオテーピング協会の会長でキネシオ接骨院(東京都中野区)の院長である加瀬剛先生は、こう話す。
「キネシオテープは、私の父である加瀬建造が“キネシオロジー”(運動機能学)に基づき、筋肉の動きを研究して開発したものです。父がアメリカでカイロプラクティックを学び、実践していた当時、先天性股関節脱臼で苦しんでいた患者さんのために考案したのが、キネシオテーピング療法です。それまでは捻挫の治療でも、患部を固定するのが一般的でしたが、キネシオテーピング療法で、患部の可動域がぐっと広がりました。また、痛みも改善されます」
キネシオテープは、薬局やスポーツ店などで手軽に買え、コツを覚えれば、自分で簡単に貼れるという。そこで、素晴らしい効果を見せてくれるキネシオテープを使って、簡単に自分でできるテーピングを加瀬先生に教えてもらった。
■基本の貼り方
(1)テープの裏紙を裂く(事前にテープの裏紙に切れ目を入れておくとやりやすい)。
(2)テープの一方の裏紙を剥がす。剥がしたテープを皮膚に貼る。もう一方の裏紙の端を引っ張るようにして、皮膚にのせるようにテープを貼っていく(仮止め)。
(3)テープを肌に密着させる。
■足の冷え
(1)かかとから小指の付け根までの長さを測る(約15センチ)。テープをその長さに切って、端5センチほどを残し、4本の切り込みを入れる。
(2)かかとに貼る。人差し指でテープを仮止めしながら、すべての裏紙をはがす。
(3)足先をそらして、各指の付け根のあたりに一本ずつテープを貼る。
「貼った後につま先でグーパーすると、血流がより早く促進されます」(加瀬先生・以下同)
■腰痛
(1)おへその脇から鼠径部まで長さを測って(約25センチ)、テープを切る。体を一直線に伸ばした状態で、おへその脇から真っすぐ下ろすように鼠径部に向かって貼る(両足に)。
(2)やや前傾姿勢をとり、テープ(約10センチ)を腰骨の上に横一文字に貼る。
「サポートとして、腰骨の上に横にもう1本貼ると、前と後ろで体を真っすぐに保てるようになるので、より効果的です」
■首のこり
(1)テープを約20センチに切る。縦に半分に切り、2.5センチ幅のテープを2本作る。
(2)耳の裏側につけて、首筋から肩甲骨の上部に向かって貼る。
(3)テープを首の両側に貼った後、テープを約15センチに切る。首の付け根の出っぱった骨を中心に横一文字に貼る。
長時間にわたり前傾姿勢をとっていると、首が前に出てストレートネックなどになり、首のこりを誘発する。それを改善するには、首筋のところにある肩甲挙筋の上にテーピングをし、首を起こすようにする。
■肩こり
(1)テープを約20センチに切る。片手にテープを持ち、テープを貼る腕の肩と腕を前に出して、肩甲骨のいちばん下からひじに向かって貼り始める。
(2)上腕の下側に沿うように貼る。
肩こりが発生するのは、肩が前に入りこんで猫背気味になってしまうため。肩甲骨の下の部分から、小円筋という上腕につながる筋肉に沿って貼ることで、肩を後ろに引っ張る効果がある。
このほか、背中にこりを感じる人は、背骨の左右に縦にテープを20センチほど貼ると、こりが改善されるという。
「背中がこるのは、背中が伸ばされた状態が続くことで、皮膚と筋膜の間の隙間が狭くなり、血流障害が起こっている状態です。こういう人は背中が冷たいはずですので、背中にテープを貼るだけで、温かくなるでしょう」
また、背骨へのテーピングは不眠症に効くという。
「自律神経は背骨に沿って通っていますので、首から腰まで、背骨の上を縦に1本、真っすぐにテープを貼ることで、自律神経のバランスが整い、不眠症が解消されます」
記者も早速試してみたところ、その即効性に驚いた。貼ってすぐに、背中がポカポカと温かく感じ、冬でも快適にぐっすり安眠できたのだ。アスリートをサポートするこのテープとテーピング法、私たちには“金メダル級”の効果があるといえそうだ。