私たちが子どものころから教えられてきた「歯みがきの常識」。それが、最新の研究結果によって次々に間違いだったことが明らかになっているという。本当に歯を守るために必要な習慣とは何なのか? 今こそ確認しておこう。
「戦後、日本では子どもの虫歯がひどかった。その対策として’60年代から学校で掲げられたのが『虫歯にならないために、毎食後3分以内に3分間以上、1日3度歯をみがこう(3・3・3運動)』というスローガン。これは今も常識とされていますが、口臭治療を行う歯科医師が研究してきた『口腔細菌学』の立場からすると、本当はよくないといわれています」
そう話すのは、歯科医院経営に関する専門誌『アポロニア21』編集長の水谷惟紗久さん。
「“3・3・3運動”は子どもに歯みがきを習慣化させるのにそれなりの効果はありました。ただ、歯みがきに適しているのは本当は食後ではないんです」
水谷さんによれば、最新の研究で、これまで常識とされてきたやり方が次々に覆っているのだとか。そこで今回、水谷さんの解説で、最近明らかになった「歯みがき」のNGを紹介。
■歯みがきは毎食後にするべからず
“3・3・3運動”を受けて多くの人がいまも食後に歯をみがいている。しかし食後の歯みがきは虫歯予防にとってNGなのだ。
「口の中の細菌をコントロールしているのは唾液。唾液がたくさん出ているときは細菌は減り、少なくなると増えます。食後というのは、消化を助けるために唾液が大量に分泌されています。つまり口腔内にとってはもっとも細菌が減っている状態。そのときに歯みがきをすると、唾液の分泌を抑えてしまうんです」
これではかえって、細菌の増殖を手助けする結果になってしまう。
■食後30分はみがくべからず
もうひとつの誤りが「食後3分以内」という時間制限。
「食事と関連づけることで、子どもたちに歯みがきを習慣づけたいという意図かもしれませんが、食後すぐに歯をみがくことは、せっかくの歯を傷つけてしまう危険性もあるとされます」
食後すぐの口の中は酸性になっている。それが唾液で徐々に中性に戻っていき、ほぼ30分後に安定するのだという。
「酸性の口内では、歯のエナメル質が少し軟らかくなると考えられています。それをごしごしブラッシングすると、エナメル質を傷めてしまう可能性があります」
もしどうしても食後、歯をみがきたいなら、30分以上たってからにしたほうが賢明だ。