日本人の3人に1人ががんによって死亡している。国立がん研究センターがん情報サービスによると、死亡数が多い部位は、女性の場合、大腸に続いて肺が2位。国立がん研究センター東病院の呼吸器外科科長の坪井正博先生が語る。

 

「肺がんは、40代くらいから発症者が徐々に増えだし、70代でピークをむかえます。特に喫煙との関連が大きいと見られているのが、扁平上皮がんと細胞肺がんです。一方、非喫煙女性にも多く、増加傾向にあるといわれるのが、肺の奥や末梢に生じやすい、腺がんです。かつて、肺がん患者の男女比は7対3ほどでしたが、特に腺がんでは女性の比率が同等くらいに増えてきました」

 

米国ハーバード大学で疫学研究に従事した、内科医の大西睦子先生も、こう解説する。

 

「’17年、米国インディアナ大学の教授は、アジア女性の肺がん患者の50%が、非喫煙者であることを指摘しています」

 

“吸わないから関係ない”と思っていても、なってしまうことがある肺がん。原因をみていこう。

 

「やはり、肺がんはたばこの影響が大きい」と、坪井先生は語る。

 

「現在は非喫煙でも、喫煙歴があったり、受動喫煙の機会が多かったりする人は注意が必要です。かつて建材などに使われたアスベストも肺がんの原因になりますが、そういった現場で働いた経験がない人も無関係ではありません。たとえば幼いときに、アスベストが付着した作業着を着ていた父親に、帰るたびに抱きついていた人が、20~30年後に発症するケースもあります」

 

また、中国で肺腺がんが劇的に増えていることから、PM2.5などの大気汚染の影響も考えられる。さらに、意外なものも……。

 

「女性ホルモンも何らかの因果関係があるという研究があります。じつは、喫煙による発がん率は男性よりも女性のほうが高い。こういった面から、男女のホルモンの違いは、影響があると考えられているのです」(坪井先生)

 

前出の大西先生が注目するのは、国立がん研究センターの予防研究グループによる大規模調査だ。

 

「40~69歳の非喫煙女性4万5,000人を対象に、8~12年間の追跡調査をしたものです」

 

対象者の中で肺がんを発生したのは153人。うち閉経した111人に、初経年齢や閉経年齢の調査をしたところ、意外な結果が出た。

 

「初経年齢が16歳以上と遅くて、閉経が50歳以下と早かった人、要は月経のあった期間が短かった人の肺がん発生率を1とすると、月経が長かった人の発生率は2倍以上になるという結果が出ました。特に、51歳以上でも月経が続いた人が、発生率が高い傾向にあります」(大西先生)

 

同調査では、子宮摘出など、なんらかの原因で人工閉経した女性の調査もしている。

 

「人工閉経や、自然閉経の前後ではエストロゲンなど女性ホルモンの分泌が急激に止まります。すると発汗したり、不眠になったり、のぼせた状態になるなどの更年期症状が出てしまうので、ホルモン剤を使用する人もいます。こうした“人工閉経してホルモン剤を使用した”グループは、自然閉経でホルモン剤を未使用のグループに比べ、肺がん発生率は2.4倍にもなるのです」(大西先生)

 

医学雑誌「ランセット」に報告された論文に目を向けても、同様の結果があると、大西先生は言う。

 

「全米40施設における1万6,000人の閉経後女性を対象にした研究です。併用ホルモン補充療法を使用すると、使用しない群に比べて、肺がんで死亡する可能性が71%も高くなりました。この結果は、女性ホルモンのエストロゲンが、がん細胞の増殖を促進するなど、何らかの影響を与える可能性を示唆しています」

 

閉経時期はコントロールできないし、ホルモン補充療法も医師との話し合いで行うものだ。

 

「だからこそ、定期的な肺がん検診を受けるように心がけることが大事です」(大西先生)