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「関節リウマチ」と聞いて、「治療が極めて難しい病気」と思っている人も多いはず。しかし今、症状の重さに差はあるが、早期発見できれば、怖い病気ではないという――。

 

「現在、関節リウマチの患者数はわが国で70万~100万人と考えられています。いわゆる“お年寄りの病気”と思い込んでいる人も多いのですが、患者数は40~50代が山。全体の8割は女性なんです」

 

そう語るのは、関節リウマチ治療の第一人者で、東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学の山中寿教授。手足など全身の関節の中にある薄い膜「滑膜」が炎症を起こし、痛みや腫れが生じる関節リウマチ。山中教授が病気のしくみと危険性について解説する。

 

「本来なら自分の体を守るはずの免疫が誤って、自分の『滑膜』を攻撃してしまう“免疫異常”による病気です。進行すると『関節破壊』を起こし、骨や軟骨が壊れていく。その症状が火事のように体の中に広がっていって、手足の指が変形したり、場合によっては歩行困難を招くことも。さらに心臓、肺、腎臓、神経など全身に炎症が起こり、生命にかかわるケースもあります」

 

徐々に進行することが多いため、症状がひどくなってから治療を受ける人もいるという。

 

「症状の強さや進み方には個人差があり、発症前と同じような生活を送ることが難しいケースもありますが、それは10%ほど。知っておいてほしいのは、早期発見と適切な治療ができれば、日常生活を送ることはじゅうぶんに望めるということです」

 

身近な“難病”ともいえる関節リウマチだが、21世紀になって、治療においては劇的な進化を見せている。

 

「東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター」の患者調査によると、ほぼ進行を停止でき、寛解した患者は’01年の8%から、’17年には58%に急増! この数字の背景には、薬物治療の進歩があげられる。

 

「かつて、関節リウマチの治療といえば、鎮痛剤で痛みを和らげることしかできませんでした。しかし、現在では炎症を引き起こす免疫の働きを抑えるメトトレキサートや、炎症を引き起こすサイトカインという物質に狙いを定めた生物学的製剤と呼ばれる特効薬が治療現場で使われ、いまでも関節リウマチの新薬は続々登場しています。症状を緩和するだけの薬物治療から、関節破壊の進行自体を抑える治療にシフトチェンジしているのです」

 

もうひとつは、検査方法の進歩。高い確率での、早期発見が可能になった。

 

「従来は、血液検査のほかに、骨の一部が欠けたり、骨びらん(骨の表面の細かな損傷)の有無、関節の変形が起きているかどうかを確認するエックス線検査が行われていました。それが、数年前から、エックス線検査よりも早い段階で異常を見つけられる関節超音波検査が全国の専門医療機関で一般的に使用されるようになりました。滑膜の炎症そのものを観察できるため、初期症状で発見することが可能になっているのです」

 

それでは、関節リウマチを予防する方法はあるのだろうか。

 

「今のところ、関節リウマチの予防に有効な手立てはない」と山中教授は語るが、医学の進歩により、この病気の謎は解明されつつあると付け加える。

 

「最近の研究では、発症に関する遺伝子がいくつも見つかっているので、予防医療が進んでいくと思われます。現在、明らかになっている危険要因は喫煙。関節リウマチは遺伝性の病気ではありませんが、両親が患者だった場合は遺伝的要因を持っている可能性があり、そんな人が喫煙すると、発症リスクが約20倍も高くなることが明らかになっています。また、歯周病も原因のひとつとして指摘されています。歯の衛生も心がけるようにしましょう」

 

予防医療も期待される関節リウマチ。“治らない病気”と怖がらず、症状を感じたら早期に医師の診断を仰ごう。

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