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「日本人の三大死因といえば、長い間、がん(悪性新生物)、心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)が“定番”でした。しかし、脳卒中が減少する一方で肺炎が増加。平成23年度以降は、“肺炎”が死因の第3位になっています」

 

そう語るのは、『肺炎がいやなら、ご飯に卵をかけなさい』(飛鳥新社)の著者で、これまで30年以上呼吸器の診療にあたってきた日赤医療センターの生島壮一郎先生。主な死亡原因の最新データは次のとおりだ(厚生労働省「平成30年人口動態統計」より)。

 

□悪性新生物:27.4%
□心疾患:15.3%
□老衰:8.0%
□脳血管疾患:7.9%
□肺炎:6.9%
□不慮の事故:3.0%
□誤嚥性肺炎:2.8%
□腎不全:1.9%

 

一見すると、肺炎は第3位どころか5位となっているが、そこには意外なからくりがあった。

 

「ひと言で“肺炎”といっても、その種類はさまざま。たとえば、食べ物や飲み物、唾液などが気管に入ってしまうことで起こる『誤嚥性肺炎』は、それ自体を診断名として届け出ることも増え、データでも死因の7位になっています。しかし、誤嚥性肺炎も“肺炎”の一種。この2つを合計すると9.7%と、3位の老衰を上回ります。老衰の中にも肺炎と診断されている人は含まれているため、実際はもっと多いでしょう。肺炎死の96%は65歳以上が占めるというデータもあることから、とくに中高年にとって肺炎は、死に至ることもある恐ろしい病いなのです」

 

では、改めて「肺炎」の定義とはなんだろう? 「風邪をこじらせて肺炎になった」とはよく聞くが、両者は似て非なるものだという。

 

「風邪は医学用語では『風邪症候群』といわれ、一般的には鼻腔から咽頭、喉頭までの『上気道』に急性の炎症が起こる状態を指します。主な原因はウイルス感染ですが、肺炎とはその炎症が気管支や肺などの『下気道』にまで及んでしまった状態を指します。炎症が気管支に及べば気管支炎、奥の肺に至れば肺炎というわけです」

 

さらに、肺炎は病原体が細菌、ウイルス、真菌(カビ)など多岐にわたり、患者の背景によって病状が異なってくるのも特徴だ。

 

「いわゆる風邪であれば、基本的には自然治癒するため、原因となるウイルスの特定は不要です。しかし肺炎となると、病原体によって重症になったり、高齢者や免疫の低下している方では放置しておくと命取りになりかねません。せきや痰などの代表的な症状は似ていますが、もし症状が長引いたり、高熱が続く場合には、自己判断せずにまずは医療機関を受診するよう、心がけてください」

 

「女性自身」2019年12月17日号 掲載

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