研究で1日8千歩・20分の早歩きが病気予防に効果的だと判明。 画像を見る

「主人の母を介護していた10年前から血圧とコレステロール値が高くて薬を飲んでいました。でも5年前に、町の保健センターの人に勧められて歩くようになってからは、薬に頼らなくても血圧が安定し、コレステロール値も改善。子どもたちからも『年のわりに若いよ』と言われるんです」

 

こう語るのは、中之条町で暮らす主婦の遠田敏子さん(70)。群馬県の北西部に位置する人口約1万5,000人の中之条町。この小さな町で行われている研究から生まれた歩き方が生活習慣病を予防し、健康寿命まで延ばすとして世界から注目を集め“中之条の奇跡”とまで呼ばれている。

 

そんな話を聞いた本誌記者はさっそく中之条町を訪ねてみた。長野県と新潟県に接する県境の町に入ると、腕を大きく振ってウオーキングしている男性や坂道をスタスタと姿勢よく歩いていく女性グループなど、とにかく歩いている高齢者をよく見かけるように。

 

研究を主導している東京都健康長寿医療センター研究所・社会参加と地域保健研究チーム専門副部長の青柳幸利先生が解説する。

 

「’00年から20年にわたって5,000人を超す人を対象に調査を行ってきました。その結果、1日8,000歩、うち20分間だけ早歩きをすると、さまざまな病気を予防できることがわかったのです」

 

次の有病率を見てほしい。毎日の歩数が2,000歩未満の人に比べて、8,000歩・20分の早歩きをする人は死因の上位を占める、がんの有病率が4分の1、心疾患が12分の1、脳卒中が15分の1に。生活習慣病の糖尿病や高血圧、動脈硬化の予防もできたという。

 

【うつ病】2,000歩未満:6% → 平均8,000歩・20分:1%
【認知症】2,000歩未満:7% → 平均8,000歩・20分:0%
【心疾患】2,000歩未満:12% → 平均8,000歩・20分:1%
【脳卒中】2,000歩未満:15% → 平均8,000歩・20分:1%
【がん】2,000歩未満:8% → 平均8,000歩・20分:2%
【骨粗しょう症】2,000歩未満:18% → 平均8,000歩・20分:3%
【高血圧症】2,000歩未満:48% → 平均8,000歩・20分:12%
【糖尿病】2,000歩未満:16% → 平均8,000歩・20分:4%

 

※「平均8,000歩・20分」は、歩数が7,000〜9,000歩かつ早歩き(中強度運動)が15〜25分未満の人を指す。

 

「1日8,000歩・20分の早歩きをすることで代謝は活発になり、心肺機能はアップ。体温が上がって免疫も高まります。ほかにも、足の筋肉が刺激されることで血流が改善して血圧が下がったり、血糖値を下げる効果もあるんです。いまだに1日1万歩のウオーキングが体のためになると、思い込んでいる人は少なくありません。しかし、私たちの研究では1日1万歩だと、かえって体が疲弊してしまい、免疫力が下がって病気にかかりやすくなる可能性があることもわかりました」(青柳先生)

 

「女性自身」2020年3月17日号 掲載

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