「免疫を高めて病気を防ぐ」とは、医療費抑制の切り札になる

依然として猛威をふるい続ける新型コロナウイルスに立ち向かうためには、ぬかりない予防対策だけでは不十分。万一感染してしまったときにウイルスに負けない“免疫力”を、いまからしっかり強化しておきたい。

 

「免疫というのは、ひと言で言えば、私たちの体内に生じるさまざまな異物に反応し、それらを抑え込んでくれる機能のことです。たとえば、体内にがん細胞のような異常な細胞が生じたとしましょう。すると人間の体は、炎症を促進させる伝達物質を分泌し、それらの細胞を破壊するよう命令します。このように、がん細胞やウイルスに感染した細胞やウイルスに感染した細胞を破壊する防御機能を免疫と呼ぶのです」

 

そう話すのは、純真学園大学客員教授の飯沼一茂先生。

 

「講演などでもよくお話しするのですが、免疫力という観点からすると、現代の“清潔すぎる”環境は実は好ましくありません。たとえば、ひと昔前は野菜に寄生虫や泥がついているのは当たり前で、私たちはそれをある程度の量、自然に体内に摂取していました。そのことにより、私たちの体は寄生虫や土壌の雑菌に対する耐性を養っていたのです。Tレグ(制御性T細胞)という細胞があり、無菌状態で飼われたマウスでは、このTレグ細胞が減少するという実験結果も出ています」(飯沼先生・以下同)

 

近年、泥んこ遊びを推奨する幼稚園や保育園が増えているのも、このTレグ細胞を育てるのが狙いだという。

 

「実は免疫細胞の約70%は腸内に存在しているのです。なんといっても、人間の腸のひだをすべて広げるとテニスコート1面分くらいありますから。クロストリジウム属細菌という腸内細菌によってTレグ細胞が増加する、というマウスの実験の結果も出ていますが、腸内環境を整えてTレグ細胞を増やすということは、ほぼそのまま、バランスのよい免疫力のアップに直結するのです」

 

悲しいかな免疫力は加齢によっても衰えていくが、その衰えを食い止めるためには、なにはさておき腸内環境を整えなくてはならないとのこと。それでは、具体的にどんな食べ物がよいのだろう?

 

「腸内環境を整える食材の代表はきのこ類、また、なるべく菜食を心掛け、お肉を食べるなら牛肉よりも豚肉がおすすめです」

 

日本伝統の鍋物は、免疫力の向上にはまさにうってつけのメニューだそう。とはいえ毎日鍋をつつくわけにはいかないし、そもそも鍋の季節はとうに過ぎてしまった……が、もちろん免疫維持に効果的な栄養素を取る手段は食事以外にもある。

 

「それがβグルカンです。βグルカンは多糖類の一種で、Tレグをつくる腸内環境の餌になるだけでなく、それ自身が腸内細菌のバランスを改善し、それによって免疫バランスまで改善してくれるのです。サプリメントも市販されていますので、手軽に試すことができますよ。サプリメントの効果には懐疑的な向きもありますが、必要な栄養素を効率よく摂取するには有効だと思います。βグルカンにはきのこや海藻、大麦やパン酵母、黒酵母由来のものがあります」

 

サプリメントでもまだ、まどろっこしい! というせっかちな人には、こんな驚愕の方法もある。

 

「国内の5つの大学病院で『便移植療法』という方法が実施されています。これは若い人の理想的な腸内細菌を、便を移植することで自分の腸内に取り込むというもの。方法は簡単で、健康な人の便を生理食塩水に溶いてろ過し、内視鏡で移植するだけ。保険の利かない自由診療で、費用は約100万円程度ですが、それでも2年待ちだと聞いています」

 

とっぴな治療法な気もするが、それだけ腸内環境の整備と、それによるバランスのよい免疫力の向上が重要であることの証しか。

 

「免疫を高めて病気を防ぐという東洋医学的な発想を取り入れた、いわゆる統合医療は現在の医療のトレンドとなっています。医療費の増大が問題となっているいま、多くの病気の原因となる慢性炎症を抑えることは急務です。その意味ではバランスのよい免疫力の向上というのは、重要なキーワードになってくるでしょう」

 

この先、子どもや孫の世代にのしかかる医療費負担を軽減するためにも、免疫力の向上は中高年の必須課題なのだ。

 

「女性自身」2020年4月7日号 掲載

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