政府が緊急事態宣言の延長を発表したことにより、自宅で過ごす時間の長い日々はまだしばらく続くことに。在宅中はついつい自分を甘やかしてしまうという人も少なくないだろう。しかし、そんな悪習慣が体に及ぼす悪影響について、疲労外来ドクターの工藤孝文先生は警鐘を鳴らす。
「海外では、感染予防のための外出禁止や隔離の長期化により、うつや不安障害などの症状を発症している人が急増しているという報告が次々と出ています。日本も例外ではありません」
工藤先生の元に訪れる患者さんの中にも、不安や不眠症など精神的な不調と関係する症状を訴える人が増えているそうだ。
生活のリズムが変わるだけでなく、家族の不安定な気持ちが伝染して家庭内でピリピリしたムードになったり、外出が減り気分転換がしにくくなっているなど、さまざまな要因が考えられるという。
「こうした状況が、ストレスや不安、睡眠障害などを招きやすくするのですが、これらはすべて脳のコンディションにも深く関係しています」
特に中高年世代では、これらが“脳の老化”にもつながってしまうのだという。そんな“巣ごもり中のNG”が次の習慣だ。
【1】外見に気をつかわない
「外出する機会がないからといって、着の身着のまま、メークもせずにボサボサ頭、という状態が続くと、知らず知らずのうちに気持ちがふさぎ込むスパイラルに陥ってしまいます。起きたら寝グセはきちんと整える、たまには部屋着ではなく外にも出られる服装で過ごす、といった心がけが大切です」
自分がさえない顔をしているのを鏡で見るたびに、「イケてない」「老けた」とネガティブな感情を脳にすり込むのもNGだ」(工藤先生・以下同)
【2】人と会話をしない
「人は、自分の話に相手が共感してくれることに喜びを感じるもの。巣ごもり生活で会話の機会が激減すると、気持ちも落ち込みがちに。電話やインターネット通話などは、精神的な安定を保つためにも効果的です」
話し相手がいない場合は、歌を歌う、文章を音読するといったことも前向きな気持ちをもつためには有効だという。口角を上げるだけでも脳によい刺激を与えることができるそうだ。
【3】すぐ何かを批判したくなる
自粛が続くなかストレスがたまっていると、集団のルールから外れる人などを過度にバッシングする傾向が生まれやすくなる。
「これは感情のコントロールができなくなっているからで、前頭前野の働きが衰えている状態です。感情をむき出しにし続けていると、ついには人間関係の崩壊を招きかねません。感情的になったらいったん落ち着いて気持ちをノートに書き出す、日記を書くなど、自分だけの感情を吐き出す場を作るようにしましょう」
【4】カフェインを取りすぎる
一日中家にいると、コーヒーやお茶など、カフェインの入った飲み物を絶えず取りがちに。
「カフェインには覚醒作用があり、交感神経を優位にするので、仕事中には効果的ですが、取りすぎは睡眠のリズムを崩したり、自律神経のバランスを乱す要因にも。コーヒーであれば1日4杯くらいまでにして、夕方以降はホットミルクや白湯に切り替えるなど、取りすぎには注意しましょう」
また、最新情報はチェックしつつも、1日に見る番組や時間帯を決め、生活の中にリラックスできる時間を設ける工夫をするべきだと工藤先生は話す。
「食事、運動、睡眠など、どの分野にも注意点がありますが、特に注意してほしいのは、情報の洪水にさらされること。在宅中、テレビをつけっぱなしにするのは、避けてください。ニュースではどうしても新型コロナウイルス感染拡大の話題や、それに伴う経済不況のトピックスが中心で、不安につながるものが多く放送されています。そうした情報を過度に受け取っていると脳は興奮状態になります。常に情報を受け続けることは避けて、脳を休息させる時間を持つよう意識してください」
「女性自身」2020年5月26日号 掲載