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「肩が上がらない、手先がしびれる、腰が痛い……。一見、“老化のせい”とも思えるようなこれらの症状は、“噛み合わせのずれ”が原因になっているかもしれません。『年を取ってきたからしかたない』とあきらめていた人も、噛み合わせを正すことで不調が改善されるケースは多くあるのです」

 

そう話すのは、桜通り歯科クリニック・院長の松浦敦さん。クリニックの壁には、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手をはじめ、トップアスリートのサインがズラリと並ぶ。

 

同クリニックでは、一般的な歯科診療のみならず、噛み合わせと体のつながりを重視した治療を行っているという。そもそも、なぜ噛み合わせのずれがおこるのだろうか。松浦さんが続ける。

 

「原因のひとつは、歯の経年劣化です。長年の生活により歯が削れることで噛み合わせがずれだし、あごや頭蓋骨の位置がゆがんできます。この“ゆがみ”によって、体のバランスが崩れ、さまざまな不調が起こるのです。噛み合わせを改善し、体のバランスを正常化すれば、体の可動域も広がり血流もよくなる。歯とは関係なさそうな不調も改善されるのです」

 

さっそく、自分の噛み合わせがずれていないか、次のセルフチェック法を実践してチェックしてみよう。

 

【「噛み合わせのずれ」セルフチェック法】

□ 舌をべーっと出したとき、舌が左右どちらかに曲がっている
□ 口を大きく開けたときに、口蓋垂(のどちんこ)が左右どちらかに引っ張られている
□ 顔の前に指1本立てて、それを見つめながら顔だけ左右に向けたとき、向きづらい方向がある

 

「当てはまる人は、噛み合わせのずれによってあごの位置がずれたり、頸椎がねじれたりしていることが考えられます」

 

松浦さんは、噛み合わせのずれが起きるもうひとつの原因についてこう続ける。

 

「それは、スマホやパソコンなどの長時間利用です。じつは、“目の使い方”と噛み合わせのずれには大きな関係があります」

 

スマホを使っているときは首が前傾しやすく、視線が画面だけに固定される。すると首の後ろの筋肉が緊張し、奥歯に圧力がかかるのだという。

 

「奥歯だけに圧力がかかると、噛み合わせはずれていきます。最近では、スマホを見ながら一人で食事をするという人も増えてきていますから、噛み合わせの異常は高齢者だけの問題だけではないのです」

 

腰痛をはじめ、さまざまな不調の一因となっている噛み合わせのずれを改善するためには、何をしたらよいのだろうか。松浦さんが自分でできるセルフケア法について教えてくれた。

 

【1】パソコンのモニターは『少し高い位置』に

「パソコンのモニターが視線より低いと、首が前傾になり、噛み合わせのずれを招きやすい。モニターを台の上に置くなどして、視線が下がらないようにしましょう。視線を意識的に上へ向けると、横隔膜が緩み鼻呼吸もしやすくなります。鼻呼吸をすることで、毛細血管を広げる『一酸化窒素』が体内に発生するので、血流改善の効果も期待できますよ」

 

【2】机の左側に写真を置いて眺める

「まっすぐ前を向いたときに左右の視野の広さを比較すると、右目の視野のほうが広いというデータがあります。そのため、パソコンやスマホを集中して見ているときは、無意識に右目で集中して見ている人が多い。結果的に、体の右側に緊張が続き、噛み合わせにもずれが生じやすくなるのです。これを軽減するには、デスクの左側に写真などを置いて眺める時間を作ること。また、左手で突起のあるボールやおはじきなどを握って、体の左側に刺激を与えるのもよいでしょう」

 

【3】景色を楽しみながら歩く癖をつける

「体の緊張をほぐし、噛み合わせのずれを防ぐには、足裏の重心運動=歩くことも必要です。なるべく一点だけを見つめることなく、景色を見ながら歩きましょう。ここでも、右利きの人は左側の景色をより長い時間眺めるようにすると、噛み合わせのずれ防止になります」

 

【1】〜【3】を実践しながら、松浦さんがおすすめする次のストレッチを行うと、より噛み合わせのずれを軽減することができる。毎日の生活に取り入れてみよう。

 

【噛み合わせのずれで起こる体の異常を治す「胸郭・横隔膜のストレッチ」】

【1】膝を閉じて座る
【2】骨盤を動かさないように、体幹を左に向かって回す。息苦しくなるところまで回したらストップ。
【3】そこからさらに最も息苦しい位置まで体を丸める。姿勢をキープし、鼻呼吸でゆっくりと腹式呼吸を5回行う。

 

“自分の不調は、噛み合わせのずれからきているかも”と感じたら、医師にはどのように相談したらよいのだろうか。

 

「じつのところ、歯科医は噛み合わせと体のバランスとの関係性については多くを学んでいません。噛み合わせが体に与える影響を考慮し、トータルケアを行う歯科医は少ないのです。不調について相談したとき、『噛み合わせとは関係ありません』と頭から否定せず、しっかり話を聞いてくれる歯科医を選んでください。説明に納得がいかなければ、治療を受けずにクリニックを変えてみることをオススメします」

 

最近は、噛み合わせやゆがみの調整を謳う歯科医も少しずつだが増えている。自分でできるケアをしっかり行いながら、噛み合わせのずれが引き起こす不調を改善していこう。

 

「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載

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