「腰痛の原因は1つではありません。前傾姿勢や、反り腰などで力学的に痛みが生じることもあれば、ストレスなどの心理的・社会的な要因によって、痛みが引き起こされるケースもあります。ですが、なかには“腰そのもの”ではなく“ねこ背”に起因していることもあります。その場合は、腰痛を解消するためには、まずはねこ背を治す必要があるのです」
こう話すのは、ねこ背を治すTwitter動画が、2日で40万を超える「いいね」を獲得するなど、絶大な人気のスポーツトレーナー・鈴木孝佳さん。背中を丸めるだけで、腰痛や肩こりといった体の不調が劇的に改善するメソッドが話題となっている。
「それまで腰痛の原因を探ってもなかなか判明しなかった人が、『ねこ背』を治したことで改善するケースを見てきました」
鈴木さんは、現代人のライフスタイルは、ねこ背につながる危険性が高いと指摘する。
「人間の脳には、自分の体の状態を正しく把握する『ボディスキーマ(脳の中の身体地図)』と呼ばれる機能が備わっています。わかりやすくいうと自分の体に対する無意識のイメージのようなもので、体の各部から送られてくる情報をもとに、四六時中アップデートされています。座りすぎや運動不足に陥りがちな現代人は、脳にじゅうぶんな情報が送られず、このボディスキーマの精度が落ちてしまうのです」
そこで今回、鈴木さんから「ボディスキーマ」を正しく作動させるための生活習慣と、簡単なエクササイズを教えてもらった。ねこ背は自覚していない人も多いそうなので、まずはセルフチェックを。
腕を胸の前にまっすぐ伸ばしたまま、お尻を完全に下までおろせない場合は、ねこ背の可能性を疑おう。
【1】座るときは坐骨を立てる
「世界的に見ても日本人は“座りすぎ”といわれていますが、人によっては1日の大半を座って過ごすこともありますから、座り方は立ち方以上に気をつけなければなりません」
イスなどに座るときは、両手でお尻の肉を持ち上げるようにして座ること。指先に触れる坐骨を、イスなどの座面に立てた状態で座るのがポイント。
「坐骨の角度をきちんと意識して“お尻で座る”ようにしてください。ねこ背の人は“腰で座ってしまう”ことが多いので注意が必要です。できれば25分に1回は立ち上がって3〜5分動くのが理想です」(鈴木さん・以下同)
【2】電車で片足立ちを
「運動の時間が確保できない人は、日常の動作にエクササイズを取り入れるのも手です」
電車などでの移動はなるべく座らずに。バランスを取りながら、左右の足を交互に20秒程度浮かせて片足立ちを。
「また、つり革などにすぐにつかまれるようにしたうえで、目をつぶって立つのもいいでしょう。ぐらつくようならボディスキーマが弱っているかもしれません」
【3】お昼のコーヒーはNG
「食生活もねこ背と密接に関わっていますが、気をつけたいのがコーヒー。コルチゾールというホルモンの分泌が増える12〜13時の間にコーヒーを飲むと副腎にストレスがかかり、正しい姿勢を保つのに悪影響が出てしまいます。コーヒーを飲みたいなら、コルチゾールの分泌がピーク前の朝の9時半〜12時前くらいまでにしましょう」
【4】スマホは顔の高さまで上げて
「うつむき加減でのスマホの操作はねこ背に拍車をかける習慣そのもの。ひじを90度に曲げてスマホを持ち、そのひじを反対の手で支えるようにしましょう。口呼吸の予防にもつながりますよ」
生活習慣の改善ポイントに続き、最後は鈴木さんおすすめの丸まりエクササイズ。
【丸まりエクササイズ】
(1)正座の姿勢から上半身を倒す。このとき肩幅と同じ幅で腕を置く。手は開いて小指側の側面を床にピタッとつける。
(2)背中を丸めながら呼吸。肋骨をみぞおちにしまうイメージで、息を吐き切ったら、背中の膨らみを感じながら吸う(4回繰り返す)。
「腰が反っているとどうしても呼吸が浅く、速くなり、ねこ背の原因になってしまいます。ですから、背中を丸めることによって、深い呼吸を取り戻すことが大事になってきます。丸まりエクササイズは、運動不足や腰痛の人でも簡単にできますが、肝心なのは正しい呼吸を心がけること。口から細く長く吐き切り、息を止めたら、次は鼻からゆっくり吸うようにしてみてください」
「女性自身」2020年10月13日号 掲載