認知症リスク高める「歯ぎしり」予防に期待「睡眠前5習慣」
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「コロナ禍において、歯ぎしりなど、歯に強い力が加わっている患者さんが増えています。虫歯や歯周病と同様、歯ぎしり、食いしばりも歯を失う大きな要因。早めの対応が求められます」

 

こう注意喚起をするのは、小林歯科医院(東京都)の歯科医師・小林友貴さん。夜中、ギリギリといやな音を出す歯ぎしり。なぜコロナ禍と関連するのだろうか。

 

「歯ぎしりはストレスが原因の一つと考えられています。たとえばコロナ流行の第3波のなか、再びリモートワークに切り替わった夫と、一日中、顔を合わせることがストレスであれば、歯ぎしりの原因になり得ます。こうした明確なストレスがなくても、漠然とした感染に対する不安でも、リスクになるはずです」

 

日々のストレスがほかの不調につながらないよう、歯ぎしりという形で発散しているのだという。その力は、起きているときでは出せないほど、大きなものだ。

 

「人間は、意識的に強くかみしめようとしても、歯にかかる力は50キロ程度です。しかし寝ているときは、潜在的な力が出て、115キロもの力がかかることもあります。これは、ご飯を食べているときの8倍ほどの力です。また、起きている12時間のうち、力をこめて上の歯と下の歯があたっている時間は30分ほどしかありません。でも、寝ているときの歯ぎしりは、たった1時間で40分も続くことがあります」

 

歯への負担が大きいが、やっかいなのは、寝ているときの症状なので、本人が気づきにくいことだ。

 

「ギリギリと音が鳴るような歯ぎしりや、タッピングといって口を開けたり閉じたりしてカチカチと音が鳴る症状は、家族が気づくチャンスがあります。でも、食いしばりの場合は気づけません。朝、起きたときに顎が疲れている、こめかみが痛い、肩凝りが気になる人は、疑ってみてください。また、起床時に舌や頬の裏の粘膜に、歯の圧痕がある場合も、要注意です」

 

歯ぎしりは顔のまわりの筋肉の痛みや歯が削られるだけでなく、寿命すら“削って”しまう可能性もあるという。歯に金属の詰め物をしている場合、力が加わることで詰め物の周辺に小さなヒビが入りやすくなる。

 

「そこが刺激されたり、バイ菌が入ってしまうと、痛みが出る。虫歯でもないのに歯が痛い場合は、歯ぎしりなど力の関与を疑います」

 

また、歯周病によってぐらつきのある歯に、歯ぎしりの力が加われば、歯周病の悪化を招く。

 

「歯の表面につくプラークといわれる汚れは、1ミリグラムに約1億の菌がすみついていますが、通常、血管内に入ることはありません。しかし、歯周病になると歯と歯茎の間に炎症が起きて、皮膚でいうと擦り傷ができているような状態になる。そこから菌が入り込んでしまって、さまざまな病気を引き起こすのです」

 

高齢になり、体の抵抗力が弱まるほどリスクは高まる。肺炎や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病など、さまざまな病気の原因になるという。

 

虫歯の治療のために神経を抜いた歯は、圧力がかかると“歯根破折”といって根元から割れることがあるという。そうすれば、歯を抜かざるをえないことが多いが……。

 

「歯を失うことで認知症リスクも高まります。歯の根っこは歯根膜に覆われており、髪の毛一本ほどのものが入り込むだけで、違和感が出るほど敏感。こうした歯根膜を通じ、大量の刺激が脳に伝わり、脳が活性化されています。さらに、かむことで歯根膜にある血管が圧縮され、血液を脳に送り込み脳の血流が活性化される。歯が9本以下(義歯なし)の人は、20本以上の人に比べて認知症のリスクが1.85倍も高いというデータがあります」

 

甘く見てはならない歯ぎしり。根治は困難であるため、しっかりした対応をしなければならない。

 

「まず、歯科を受診し、専用のマウスピースを作りましょう。保険が適用されるので5,000円ほどで作れますし、歯ぎしりの力が強い人でも1年ほど使うことができます」

 

そのうえで、睡眠前に簡単にできる5つのセルフケア方法を挙げてもらった。大切なのは上下の歯がつかないように心がけることと、リラックスすることだという。

 

【1】寝る前にストレッチを

首や肩を回すなど、全身のストレッチ。アロマオイルなどでリラックスするのも、おすすめ。

 

【2】顎のマッサージ

奥歯をかみ合わせたときに膨らむ、頬にある筋肉をもみほぐす。

 

【3】上の歯と下の歯があたらない状態で寝る

唇は開かないで、軽く前歯の上下を合わせない程度にして寝る。

 

【4】「歯と歯を合わせない」と心に決めて寝る

無意識下のことなので、自己暗示は効果が期待できる。

 

【5】寝る直前に食事をしない

特に甘いものなどを食べて、急激な血糖値の変動を起こすと、結果として交感神経が優位になり、歯ぎしりを起こしやすくなる。

 

思わぬ重病を招くこともある歯ぎしり。寿命も削られてしまう前に、セルフケアを行おう!

 

「女性自身」2020年12月22日号 掲載

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