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緊急事態宣言の発令後、再び増えた家飲み。飲食店がしまっているから、酒量が減るはずなのに、結局家で毎日飲んでしまう……と罪悪感を抱えている人に朗報だ。じつは「ビールの苦み成分に認知症の予防効果がある」という。

 

「ビールで認知症を防ぐ」そんな酒飲みにとっては夢のような話について、詳しく伺うべく、研究に携わった「キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所」の阿野泰久さんに訊ねてみた。

 

「昔から適量のお酒をたしなんでいる人は、うつや認知症になりにくいことが知られています。たとえば、赤ワインのポリフェノールには病気の予防効果があると有名です。
国内で最も消費されているビールにも何か良い成分があるはずだ、と着目したのがビールの原料となる『ホップ』でした」(阿野さん・以下同)

 

ホップは古くからヨーロッパを中心に“薬用ハーブ”として睡眠の質の改善、食欲の増進など民間医療で活用されてきた。

 

「‘16年に東京大学で行われた非臨床試験において、ホップが持つ強い苦み成分である“イソα酸”入りの食品を3カ月食べ続けた結果を調査しました。すると脳内で、“お掃除細胞”と呼ばれる免疫細胞『ミクログリア』の動きが活発化。アルツハイマー病の原因となる脳の老廃物の量が、約2分の1に減ったのです。

 

また、50~70歳の健常者に毎日180mlの“イソα酸”が入ったノンアルコール飲料を4週間飲んでもらい、脳活動を測定したところ、とくに60~70歳のシニア層でより効果があることが確認されています。“苦い”と感じる脳の刺激を通じて情報伝達機能が改善されることも分かりました」

 

阿野さんによれば、このイソα酸は、ビール1缶(350ml)に10~30ppm程度(1缶に数~10mg程度)含まれるという。

 

「苦味の強いものやコクの強いものに多く、辛口や爽快タイプにはあまり含まれていません。ノンアルコールビールにも、ホップが使われているのでイソα酸が含まれます。

 

昨今、人気が高まっている強い苦みが特徴のIPA(インディアペールエール)やセゾンビールは、ホップを多く使うためイソα酸の含有量も多くなります」

 

残念ながら「認知症予防のため」とビールを飲みすぎるのは逆効果だという。アルコールの取りすぎは、脳に悪い影響を与えるためだ。ビールの適度な飲酒量は、女性やシニア層で1日あたりアルコール度数5%のビール250gで、ビール缶1本弱程度とされる。認知症予防を目的とするなら、ノンアルコールビールを活用するのがよさそうだ。

 

海外ではノンアルコールクラフトビールの製造が盛んになっており、イソα酸の多いIPAなども、ノンアルで楽しむことができるようになりつつある。

 

ちなみに、国内産のノンアルコールビールは、ビールとは異なる材料と製法でつくる「ビールテイスト飲料」。一方、外国産のノンアルコールビールはビールを造ったあとにアルコールを取り除く「脱アルコールビール」が主流。製法は異なるが、どちらも原料にホップを使っているため「“飲んで苦い”と感じればOK」と阿野さん。

 

普段はビールという人も、2杯目以降はノンアルコールビールにする、1週間の半分を“ノンアルの日”にするなど、アルコール量を減らしながらビールの苦みを堪能すれば、「ビールは“クスリ”だ!」と胸を張って言えそうだ。

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