画像を見る

「なかなか進まないワクチン接種。接種までの間、自分の身を守るには、免疫力を上げることが欠かせません。免疫力が高ければ、感染リスクや、重症化リスクを下げることができるのです」

 

そう語るのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生。小林先生によると、免疫力アップのカギを握っているのは、意外にも“肺”だという。

 

「肺で酸素を十分に取り込めないと、血中の酸素濃度が低下。足りない酸素を補うために呼吸の回数が増え、浅い呼吸になってしまいます。じつはこの浅い呼吸が、免疫力を下げる原因となるのです」

 

ふだん何気なく繰り返している呼吸は「免疫」とどのような関係があるのだろうか。

 

「浅い呼吸は、自律神経の働きを乱します。自律神経のバランスが崩れると血流が滞るうえ、私たちの免疫細胞の7割が生息する腸の環境が悪化するのです。腸内環境が悪くなれば、当然そこにすむ免疫細胞の働きも低下してしまいます」

 

酸素の取り込みは、肺の中におよそ3億から6億個ある肺胞が行っている。この肺胞が壊れたり炎症をおこしたりすると、取り込める酸素の量が減少。恐ろしいことに、肺胞の機能は、健康な人でも20代から加齢とともに低下するという。特に喫煙者では、40代以降急激に衰えてしまうこともあるのだそう。

 

「壊れた肺胞そのものを復活させることはできませんが、呼吸の力を鍛えることで、血液に取り込む酸素の量を増やすことはできます。具体的には、1回に吸う空気の量を増やし、正常な肺胞が取り込む酸素の量を増やせばいいのです」

 

では、どのようにして一度に吸う空気の量を増やせばいいのか?

 

「呼吸をする際、肺それ自体が、膨らんだりしぼんだりしているわけではありません。肺は胸腔という胸骨、肋骨、胸椎(背骨)に囲まれたカゴ状の骨格の中に入っていて、この胸腔が膨らんだり、縮んだりして肺の中の空気を出し入れしています」

 

この胸腔を動かすのは斜角筋、肋間筋、横隔膜などの呼吸筋といわれる筋肉だ。これらを鍛えることが、吸う空気の量を増やすことにつながるという。

 

「呼吸筋が柔軟に動くと、胸郭の可動域が広がって、肺の中に空気をたくさん取り込むことができるようになり、血中の酸素濃度が上がります。それによって、呼吸が浅くなるのを防ぐことができるのです。さらに、呼吸筋が鍛えられると、ゆっくり深い呼吸ができるようになります。すると、自律神経のバランスが整い、腸内環境が改善。免疫力が高まるのです」

 

さらに「口呼吸」も免疫力を下げる要因になるという。

 

「鼻の副鼻腔で生産される一酸化窒素には、体内に侵入してきたウイルスや細菌を退治する、免疫作用があります。口から息を吸うと、この一酸化窒素を取り込むことができません。マスクをつけていると、口呼吸になりがちなので、鼻呼吸はぜひ意識してほしいです」

 

ゆっくり深く呼吸することと、鼻呼吸を意識して、コロナウイルスから身を守ろう!

【関連画像】

関連カテゴリー: