冬になると、咳や鼻水を発症する人たちが増加する。だが、その原因はコロナでもインフルエンザでもなく、“冬ダニ”かも……。
「ダニの死骸やフンが細かい粉末となって体内に侵入すると、咳などの気管支ぜんそくの発作を引き起こすことがあります。またダニアレルゲンによって、鼻炎、結膜炎といったアレルギー性疾患を引き起こすことも。もともとアレルギー症状がある人は、とくにぜんそくやアレルギー性疾患が重症化する可能性があります。季節を問わず、冬でも室内掃除、湿気をためないように換気をするなど、ダニ対策をしっかりやって、注意していただきたい」
こう語るのは、東京歯科大学市川総合病院・呼吸器内科の寺嶋毅教授。
一般的にダニは、湿気の多い梅雨から夏場にかけて繁殖すると思われがちだが、じつは冬本番となってからもダニが繁殖する危険性がある。
その理由について、ダニの生態に詳しい「アース製薬」に聞いてみた。
■高温多湿の冬の室内でもダニは繁殖する
「近年は高気密高断熱の住宅が増え、家の中は常に快適な温度が保たれています。加えて、テレワークなどの“おうち時間”の増加で、一日中暖房や加湿器がついている状況に。その環境は、ダニにとっても快適なため、冬でもダニが増える要因となるのです」
暖房や加湿器を長時間使用することにより、室内は“高温多湿”状態となる。それが冬ダニの温床になってしまうのだ。
アース製薬によると、家の中で繁殖するのは、主に“ヒョウヒダニ類”と呼ばれているダニで、大きさは0.2~0.4ミリほど。乳白色のため、肉眼では発見しにくい。人間のフケやアカ、汗などを主なエサとし、どんな家にも必ず生息しているという。
「繁殖に最もよい室内環境は室温25~30度、湿度60~80%。“ヒョウヒダニ類”は人間を刺すことはありませんが、数が増えると“ヒョウヒダニ類”を捕食する“ツメダニ類”が現れ、捕まえて体液を吸います。0.3~0.5ミリほどの大きさのため、このダニも肉眼では見えにくいです。ツメダニは偶発的に人を刺すこともあり、吸血はしませんが、体液を吸います。夜寝ている間に、布団の中で刺されることもあります」(アース製薬)
さらに、秋冬に活動する「イエニクダニ」という耳慣れないダニにも警戒が必要だという。
「室温15度、湿度70%の環境を好むので、秋冬に発生することがあります。0.5ミリほどの大きさのため、大量に発生すると無数の虫がうごめいているように見え、気持ち悪さを感じることも。カビを好んで食べるので、結露によって床や壁面にカビが生えた周辺が快適な環境となります」