亡くなった渡辺徹さんは入院後に病状が急変したという 画像を見る

11月28日に亡くなった俳優・渡辺徹さん(享年61)の死因は「敗血症」と発表された。細菌やウイルスの感染症がきっかけで免疫の制御ができなくなり、最悪の場合は死に至るという恐ろしい病気だ。また、新型コロナ感染症の重症者で、呼吸障害から多臓器不全となり死亡する症例の多くも、この敗血症によるものである。

 

「何らかの感染症にかかると、体内では免疫反応として炎症が起き、病原体を攻撃したり、障害を受けた部位を修復しようとします。これらの制御がうまくいかなくなると臓器障害につながり、血圧や心拍出量の低下から循環不全を起こし“敗血症性ショック”に進行していきます。循環不全により心臓や肺などの臓器に十分な血液を届けられなくなることで、多臓器不全となってしまうのです。渡辺さんは糖尿病や腎不全などの持病があり、人工透析をしていたというので、感染症と闘い切るだけの体力が持たなかったのかもしれません」

 

そう話すのは、救急科専門医で薬師寺慈恵病院の薬師寺泰匡院長。健康な人でも、思わぬことから突然、死の危機に瀕することがあるという。たとえば、海岸で貝殻を踏みつけて足をけがして、そこから細菌が入り、症状が悪化して敗血症で亡くなるといったケースが報告されている。

 

「日本敗血症連盟」が’21年9月に公表した調査によると、国内での敗血症患者数は、’10年に11万人だったのが、’17年には36万人に急増。’20年以降は新型コロナの感染拡大で死亡者数はさらなる増加が懸念されている。

 

「医師が診療の中で保険請求をするときに、おそらく元の感染症の病名をつけることが一般的で、敗血症とか敗血症性ショックという病名をつけられていないというケースも多く、正確な患者数・死亡者数ははっきりとはわかっていません。海外の報告などを参考にすると、日本では最低でも年間10万人程度が敗血症で亡くなっていると考えられています。 きっかけとなる感染症は肺炎や尿路感染症、腹腔内の感染症が多いのですが、最近では新型コロナやインフルエンザ、ノロウイルスのほか、手足の傷口から敗血症になることもあります。動物にかまれることも原因になります」(薬師寺院長)

 

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