少量のビールで顔が真っ赤になるような人は注意が必要だ(写真:アフロイメージマート) 画像を見る

「お酒に弱い人、つまりアルコールを分解しにくい体質の人がお酒を飲むと、胃がんを発症するリスクが高まることが、新たな研究結果からわかりました」

 

こう話すのは、国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野長の柴田龍弘先生だ。

 

胃がんは全体の約7割が「腸型」、約3割が「びまん型」と、大きく2種に分類される。

 

腸型の胃がんはピロリ菌感染が原因とされているが、びまん型の胃がんの発症原因は「まだ解明されていないんです」と柴田先生。しかし、柴田先生を中心とする研究チームによって、アルコールを分解しにくい体質の人は、お酒を飲む習慣から遺伝子変異が引き起こされ、それが原因となり「びまん型胃がん」の発症リスクが高まることが確認されたのだ。

 

耳慣れない「びまん型胃がん」という病気には、進行の早いスキルス胃がんも含まれる。

 

「がん細胞が胃全体に広がり、線維化して硬くなっている状態がスキルス胃がんです。腸型の胃がんより進行や転移が早く、5年生存率も低くなる傾向があります」

 

命を脅かす胃がんのリスクが、お酒が弱い人の飲酒と関係があるとは驚きだが、そもそも「アルコールを分解しにくい体質」とは?

 

「まったく飲めない人や、ビールをコップ1杯飲めば顔が真っ赤になる人は分解しにくい人といえます。日本人の数%が該当します」

 

少しの飲酒で気持ち悪くなったり吐いてしまう人や、よく二日酔いになる人もあてはまるそうだ。

 

「また、本来アルコールを分解しにくい体質でも、飲酒に慣れてある程度飲めるようになる人もいます。これが『中間層』で、日本人の4割ほどはいると考えられます」

 

学生時代や社会人になりたてのころなど、最初はお酒が苦手だったのに、飲み会など飲酒の機会が増えるうちに飲めるようになってきた、という人には、この「中間層」が少なからずいるそうなのだ。夫の晩酌に毎回付き合う人や、仕事や友人との付き合いでよく飲む人のなかにも、中間層の人がいるかもしれないから要注意。

 

自分が認識していないだけで、じつはアルコールを分解しにくい体質の可能性もあるとなれば気になるところ。柴田先生がセルフチェックの仕方を教えてくれた。

 

「次の2つの質問で判定します。(1)現在ビールをコップ1杯程度の少量の飲酒ですぐ顔が赤くなる傾向がありますか? (2)飲み始めたころの1~2年間はそういう体質がありましたか? このうち一方でも『はい』であれば、アルコールを分解しにくい体質です」

 

これにあてはまる場合、飲酒を続けていると胃がんリスクを高めてしまうことに……。

 

「本当は飲めない体質なのに自分で『飲める』と思っている場合は厄介です。月並みですが、『休肝日』を設けるところから始めましょう」

 

一度、自分のアルコールとの付き合い方を見直してみよう。

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