熱中症死しないための新習慣とは?(写真:PIXTA) 画像を見る

今年は猛暑を超え“酷暑”レベルの夏になるかもしれないーー。

 

世界気象機関は、世界の平均気温が7月7日に過去最高を更新したと発表した。エルニーニョ現象が7年ぶりに発生。気温は今後さらに高くなり、記録的猛暑になる可能性があるという。

 

日本でも先の3連休最終日の7月17日に、全国194地点で猛暑日を記録(気象庁)。また、環境省は熱中症の危険性を呼び掛ける「熱中症警戒アラート」を今年最多の32都府県に発令した。

 

これほどの猛暑で怖いのはやはり、熱中症だろう。消防庁によると、熱中症の疑いによる救急搬送も、7月10~16日の1週間で8189人と、今年の最多記録を更新している。前年の同時期の約2倍になるほどの急増ぶりだ。

 

天気予報などでは「不要不急の外出を控えるように」と注意が呼び掛けられるが、ずっと家で涼んでいられるわけがない。毎日の買い物や通院などで、炎天下の外出は避けられないだろう。日傘をさして水分補給するなど以外の対策はないのだろうか。

 

■手のひらを冷やせば効果アリという新発見

 

そんななか、スタンフォード大学の研究成果をもとに、新たな熱中症予防が注目されている。「手のひらを冷やすと、効果的に体温を下げられる」というのだ。

 

その研究とは、体のさまざまな部位を冷やし、そのつど、体の中心部の「深部体温」の変化を調べたもの。

 

一般に熱を下げやすいと考えられていた首やわきの下、そけい部よりも、手のひらや足の裏、頰を冷やしたほうが、早く深部体温を下げられるという結論に至ったというのだ。

 

「熱中症予防には水分補給はもちろん、体を冷やすことも重要です。そのため、私はもっとも簡単で効果的な“手のひら冷却”を勧めています」

 

そう話すのはサトウ血管外科クリニック院長で血管医療のスペシャリスト、佐藤達朗先生だ。

 

なぜ手のひらを冷やすことで、体全体を冷やす効果があるのだろうか。佐藤先生にメカニズムを解説してもらった。

 

「通常、手のひらでは動脈を流れてきた温かいきれいな血が、指先の毛細血管を通り、その後、静脈を通って心臓へとゆっくり帰っていきます。しかし、ある条件下では、ふだんは閉じている『抜け道血管』が開いて、動脈血が毛細血管を通らず、直接静脈に流れ出すことがあるんです」(佐藤先生・以下同)

 

その条件とは急に冷えたときや運動したとき。つまり、手のひらを冷やすことで抜け道血管を開くことができるのだ。

 

すると、手のひらで冷やされた血液が、動脈から抜け道血管を通って静脈に流れ込む。この血流は大量で勢いがあるため、冷やされた血液は素早く全身を駆け巡って、体の内側から体温を下げるというわけだ。

 

「自動車にはエンジンを冷やすための『ラジエーター』と呼ばれる部品がありますが、手のひらはまさに、体の熱を下げるためのラジエーターなのです」

 

手のひら冷却は冷たい水に手を浸すなどでもできるが、いつでもどこでも簡単にできる方法として、保冷剤の利用を佐藤先生は勧めている。

 

「ケーキなど要冷品を買ったときにもらう小型の保冷剤を、冷凍庫にストックしているご家庭が多いでしょう。その保冷剤を手のひらでぐっぐっと握ればいいんです。簡単でしょう」

 

手のひら冷却の注意点としては、冷たすぎると指に血が流れないリスクがあるのでNGということ。スタンフォード大学の研究では、15度前後が適しているとの報告もある。ハンドタオルなどで保冷剤を包んで、キンキンに冷えた状態ではない、ほどよい冷たさに調節しよう。

 

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