■認知症や自殺などのリスクが上がる指摘も
さらに脳で言えば、認知症と黄砂の関連も指摘されている。
「アルツハイマー型の認知症は、脳に付着したアミロイドβというタンパク質が関与しています。PM2.5の濃度が高い環境になるほど、脳に蓄積されるアミロイドβの量が増えるという論文もあります」(渡邊さん)
「昨年発表された論文では、PM2.5濃度が上昇すると、被験者によって8?12%ほど認知症罹患率が高いという結果でした」(小島さん)
呼吸器系の疾患はどうか。
「ぜんそくなどのリスクが高まることになるでしょう。またPM2.5には、発がん性があるといわれる窒素酸化物や硫黄酸化物も含まれています。長期的にさらされて異物が混入し続けると、肺の組織もダメージを受ける。肺がんリスクが高まる可能性も否定できません」(渡邊さん、以下同)
病気とは別に、自殺者の増加とPM2.5との関連を調査した論文もあるという。
「2015年に発表されたアメリカのレポートでは、過去10年間の自殺患者数を調べたところ、2~3日前にPM2.5にさらされると5%自殺者が増えるという結果でした」
時には死に直結する黄砂や、黄砂に付着するPM2.5。気象庁では3日先までの黄砂の飛散予測を、地域ごとに5段階評価で発表している。
「状況を把握して、黄砂が多い日は不織布マスクをするなど、花粉症と同じ対策をしましょう。帰宅時には玄関先で上着や頭に付着した黄砂を払い落とし家の中に持ち込まないように。また、口うがい、鼻うがい、顔を洗うことも有効だと考えます」
これからピークを迎える黄砂、しっかり対策しておこう。