■「チアノーゼになって死にかけました」
厚生労働省の2020年「患者調査」によると、病院にかかっている喘息の患者の総数は179万6000人。成人(20歳以上)は123万人で、半数超の65万人が40歳以上の女性だった。
「女性の場合は“月経喘息”と呼ばれ、月経の数日前から症状が悪化することがあります。また喘息発症の要因の1つである、肥満による影響を男性よりも受けやすいのです」
じつは、実際の喘息の有症率はもっと多く、成人の10人に1人、約1千万人が喘息患者だという研究データもある。つまり、900万人近くの患者が、適切な治療を受けず、自分が喘息であることに気づいていない“隠れ喘息”だというのだ。すでに病院にかかっている患者と年齢分布が同じだとすると、500万人ほどが40代以上の女性だということに。これは40代以上女性の8人に1人に該当する。
「何日も咳が止まらないのに、風邪が長引いているだけだと思い込んで、病院に行かず放置したままでいると、重症化する場合もあるので注意すべきです」
そこで、自分が“隠れ喘息”かどうかをチェックするために、寺嶋教授に見逃しやすい16の症状を教えてもらった。
「とくに今の梅雨時季など、雨や台風による気圧の変化で息苦しくなったり、咳き込む人は隠れ喘息を意識したほうがいいでしょう。また、就寝後、深夜や明け方に咳き込んで目が覚める、エアコンの冷たい風に当たると咳が出る人も要注意です。
それから家の中を掃除しているときに咳が止まらなくなる人は、ホコリやダニ、ハウスダストなどのアレルギーに反応している可能性があります」
16項目中3つ以上該当する人は、“隠れ喘息”を疑い、病院で診察を受けたほうがいいという。成人喘息は、生活の質を著しく下げてしまう。
「39歳のときに発症。喫煙歴はありませんでした。医者からは過労とストレスが原因ではないかと診断されました。それから毎日12年間、起床後と就寝前の2回、吸入ステロイド薬を使用しています。
薬のおかげで突発的な重い発作は起きていませんが、就寝中に咳が止まらなくなることも。迷惑をかけるのが嫌なので、家族や友人との泊まりの旅行は行かなくなりました」(51歳・女性プログラマー)
命にかかわる経験をした人も。
「25歳のとき、重い喘息の発作からチアノーゼ(口唇、顔面、爪が青紫色ないし暗赤色を呈する状態)になって死にかけました。入院中も横になると咳が止まらなくなるので、座った状態で点滴を受けました。今も吸入ステロイド薬を使って、発作が起きないように毎日コントロールしています」(43歳・女性ライター)
成人喘息の完治は難しいといわれているが、適切な薬で治療を続けることで、普通に日常生活を送ることができる。ちょっとでも“隠れ喘息”の疑いを感じたら、自己判断で放置せず、早めに受診することだ!