特効薬がなく、10日で死亡する例も…「ダニ媒介感染症」の危険性と対策
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■SFTSは発疹が出ないため診断がつかない場合が

 

なかでも近年、死亡事例も含めて報告数が目立つのがSFTSだ。

 

「SFTSは、マダニにより媒介されるSFTSウイルスによる感染症で、発熱や嘔吐などの症状が報告されています。重症化すれば死亡することもあり、致死率も公式な推定値として27%とされているんです」

 

SFTSはじめダニ媒介感染症の症状としては、発熱はほぼすべてに共通するが、発疹が出るのは日本紅斑熱、つつが虫病となる。

 

「日本紅斑熱やつつが虫病では、体に赤い発疹が出ます。また、ライム病は?まれたところに遊走性紅斑という大きな赤みが出るのが特徴。これらが出たらすぐ受診すべきです」

 

日本紅斑熱やつつが虫病、ライム病などは、抗菌薬が効くため、「早期発見できれば、治療で助けられます」と加藤先生。

 

しかしSFTSやダニ媒介脳炎は特効薬がないのだという。

 

このSFTSに関しては、新型インフルエンザ薬・アビガンが、5月24日に厚生労働省の部会で、世界初のSFTS治療薬として承認された。

 

8月日には厚生労働省の諮問機関・中央社会保険医療協議会によって保険適用が承認されたばかり。

 

加藤先生は、厚労省の研究班で診療の手引きの作成に携わっているが、「アビガンの効果は早期に使用することで発揮される」として説明する。

 

「SFTSを発症してから一定の日数が経過している場合、アビガンの効果が期待できない場合が多いといえます。SFTSは発熱などがあるものの、発疹が出たりはしないため、早期のうちにダニ媒介感染症と診断がつかない場合が多いんです。 たとえば高齢の方が、SFTSを発症して重症となり、何日もたっているという段階になってしまえば、アビガンの有効性は期待できると言えないんです」

 

よってSFTSに感染した場合、対症療法、すなわち、 「重症の患者さんに関しては、全身管理といって、入院して合併症の治療など、本人の体力の回復を待つ治療となります」

 

ところで前出の事例では、感染した人は、庭の手入れ、山菜採り、農作業といった、アウトドアでの行動があったことがわかる。

 

SFTSをはじめダニ媒介感染症に感染する恐れのある場所としては、「登山・高原」「畑作業」「山菜採り」「庭仕事」、そして「家の中」だと加藤先生は言う。

 

「ペットの犬や猫などがダニを持ち込むと、家の中でも感染リスクがあります。SFTSでは発病した猫に?まれて感染した事例もあります」

 

では、登山や山菜採り、庭の手入れなどの際には、どんな予防策があるのだろうか。

 

「長袖・長ズボン着用で防虫スプレーを使用のこと。それでも体に付いている恐れがあるので、帰宅後はシャワーで体を洗いましょう」 前述した事例四のSFTSで死亡した女性は、ふだんの庭の手入れで、長袖・長ズボンを着用していたとされる。 やはり帰宅後は、シャワーで洗い流すまで念入りに行いたい。

 

ときに、もしマダニがくっついているのがわかった場合は……。

 

「マダニは、皮膚にしっかり食い込んで、吸いついた状態で初めて気づく場合があります。

 

無理に取ろうとすると病原体が体内に入ってしまう恐れがありますので、決して自分で取らずに、皮膚科を受診しましょう」

 

秋の行楽シーズンにかけても注意が必要。できる対策を怠らないように!

 

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