「今は東京に住んでいて田舎にある両親のお墓を管理できません。お墓を近くに移動したいのですが」(40代女性)
「娘が嫁いだので墓の跡継ぎはいません。いつまでも私たちの墓に縛られるのはかわいそうなので、夫の骨を納骨堂に移して、墓石を処分する『墓じまい』をしたいと思っています」(60代女性)
近年、こうした相談が増えているというのは「こちらOK行政書士事務所」の勝桂子さん。遺骨の引っ越しや墓じまいの手順はこうだ。
(1)新たな安置先の「受入証明書」をもらう
(2)現在の墓地から「埋葬証明書」を発行してもらう
(3)現在の墓地のある地域の自治体へ1、2と「改葬許可申請書」を提出して「改葬許可証」を発行してもらう。これを新たな安置先の管理者へ提出
(4)現在の墓地の御霊抜きの供養後、安置先へ納骨
「墓じまいのトラブルの多くが、2の菩提寺から『埋葬証明書』を発行してもらうときに生じます。檀家に抜けられると、管理料や法事がなくなり死活問題となります。何百軒もの檀家を抱えている大きなお寺ですら『年間数パーセントの人が改葬(お墓を撤去)している。5年後はどうなるのか……』と、戦々恐々としています」
当然、防御本能が働いた寺は、檀家を強引に引き止めることもある。
「ひどいケースでは『今後予定されていた法事に支払うべきお布施を一括払いしてください』『檀家だった期間に応じた金額を』と50万、100万、200万円といった高額の『離壇料』を請求されたりします。『離壇料』に納得いかなくても、現実的には菩提寺が埋葬証明書にハンコを押さない限り、勝手にお骨を取り出すことはできません。中には裁判に発展するケースもあります」
“墓じまい”を成功させるうえで大事なのは、こじれないよう根回しすることだ。
「長く付き合いのあった檀家が、ある日突然『お墓を閉じたい』と言いだすと、僧侶も感情的になり、トラブルが大きくなることがあります。墓じまいを希望した段階で、早めに『跡取りがいないから』『そろそろ墓参りもつらくなった』とお寺に意思を伝えましょう。『それでは◯回忌まで』『あなたの代まで』と話し合う時間が持てるはずです」
それでも「離壇料」を求められることも多いというが……。
「離壇料の名目で金額を支払う必要はないと感じます。しかし、年間わずか1万〜2万円の管理料で毎朝必ずお経をあげ、墓の草むしりもしてきた菩提寺に、感謝の気持ちを『御霊抜きのお布施』としてお包みしましょう。一般的には3万〜5万円、菩提寺の寺格が高かったり、これまでのお付き合いが深ければ10万〜30万円ほどでしょうか」
ここまでクリアすれば、あとはお墓の撤去だ。
「一般的な大きさのお墓で工事費用が10万〜20万円ほどかかります。斜面に墓地がある場合など、クレーンを使うようなケースでは40万〜50万円になることも。そうした実費を事前に見積もることも忘れないように」
何より日ごろから寺との関係を良好に保つことが大切だ。