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「『配偶者控除』見直しの検討は、安倍政権が掲げる“女性が輝く社会”にするため、みんなが仕事をして、社会保険料や税金を納めていくという政策の一環です。今ちょうど、与党で議論されていて、今年の年末に公表される『税制改正大綱』に、配偶者控除をなくすことが明記されますと、来年1月下旬からの通常国会で成立して、早ければ’18年1月から施行されるでしょう」

 

そう語るのは、ファイナンシャルプランナーの加藤梨里さん。以前から廃止が取り沙汰されていた「配偶者控除」。この制度がいよいよなくなりそうだ。配偶者控除がなくなると、夫の負担はどれだけ増えるのか。加藤さんに試算してもらったところ、たとえば、年収300万円の場合、年5.2万円が控除されていた額なので、その分がなくなることに。年収400万円なら年7.1万円、600万円では10.9万円も負担が増える。

 

そうでなくても、この10月からは、“130万円の壁”がなくなっている。(1)1週間の勤務が20時間以上、(2)年収106万円以上、(3)同一の職場に1年以上勤務する見込み、(4)勤務先の従業員数が501人以上、(5)学生でない、−−といった条件が当てはまると、厚生年金と健康保険の加入が義務付けられるのだ。

 

この新たな“106万円の壁”で、社会保険料の負担額は約17万円になるともいわれている。そして、社会保険料の負担を回避するため、働く時間をセーブしていた主婦たちに追い打ちをかけるのが、「配偶者控除」のカット。これまでどおりの働き方をしていると、一家の手取りは減り続けるいっぽうだ。

 

「配偶者控除に代わる、新たな仕組みとして検討されている制度があります。妻が専業主婦であっても、パートやアルバイト、正社員で働いていても一定額の控除が受けられる『夫婦控除』です。控除の額など、具体的な制度の仕組みはこれから検討されます」(加藤さん・以下同)

 

配偶者控除は、年収が高い人ほど控除の額が大きくなる仕組みなので、所得が低い世帯はそれほど恩恵を受けるわけではない。夫婦控除を導入すれば不公平が解消されるので、「夫婦で働く世帯は報われる」という声もあるが、はたして本当なのだろうか?

 

夫婦控除の導入で、すべての主婦がバリバリ働けるようになるかと思ったらそうでもない。もともと妻も正社員で働いているような共働きの世帯であれば、新しい制度は追い風になるだろう。しかし、妻がフルタイムでは働けない事情がある世帯にとっては、配偶者控除や家族手当がなくなるデメリットのほうが大きい。

 

「働きたくても保育園に空きがないから働けないという人もいます。また、子どもが小さいうちは、急な発熱などで仕事を休んだり、早退することもあるので、フルタイムの仕事に戻らないで、時間の融通のきくパートやアルバイトで働き続けたいという女性が多いのも事実です。最近は育児に熱心なイクメンも増えたといわれていますが、家事や育児についてはまだ女性の負担のほうが大きすぎます。いくら政府が働けと言っても無理があります」

 

育児だけでなく、親の介護や自分自身の病気などで働けない人もいる。そういった人たちも平等に恩恵を受けられるのかといった疑問も残る。配偶者控除の対象は約1,500万人、税金のカット分は年約6,000億円にもなるという。長年定着した制度を見直すためには、不公平感をなくして、女性たちの実情に沿った支援をしてもらわなければ、いつまでたっても子育て中の女性は働くことはできないのだ。

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