新宿駅南口から歩いて2〜3分、喧噪を抜けたあたりに立っていたのは、柔らかなフォルムが特徴的な白いビルだった。3〜5階のあたりに、大きな楕円形の窓がはめ込まれており、まるでSF映画に出てきそうな佇まい……。
言わなければ、誰も“納骨堂”とは思わないだろう。この「新宿瑠璃光院白蓮華堂」は2年前の’14年に建設されたばかり。同館の業務統括推進本部部長・木下尚子さんは言う。
「白蓮華堂を管理しているのは、岐阜市にある浄土真宗の寺院・無量寿山光明寺です。建物は世界的に有名な建築家・竹山聖さんがデザインしました。白蓮の花がいま開こうとしているところをイメージしています」
“SF的”なのは外観ばかりではなかった。入口で読取り機にICカードをタッチすると、参拝所の場所が示される。参拝所は地下1階だったが、墓所でICカードをホルダーに挿入すると、すりガラスの扉が左右に開き、ピカピカの墓石が現れる。その傍らには故人の写真と戒名、生花、お焼香が用意されていた。
3階から5階は、如来堂、本堂、法隆寺金堂壁画の間と、さまざまな部屋があり、阿弥陀如来などの仏像が、太陽光の差す位置まで計算されて配置されている。
「お墓参りをした後に、気軽に上の階にも寄っていただいてけっこうです。ぜひお墓を身近なものとして感じていただきたいです。こちらで販売するのは3,500基ですが、今年末までには第1期販売分の、1,000基が完売予定です」(木下さん・以下同)
納骨堂には大きく分けると、ロッカー式、仏壇式、自動搬送式の3タイプがある。このなかでも近年増えているのが、新宿瑠璃光院白蓮華堂も採用している自動搬送式。骨壺を入れる厨子(仏具)が、ICカードを読取り機にタッチすることで、参拝場所まで運ばれてくる。この方式だと、限られたスペースでも何千という厨子を保管できるのだ。
ちなみに新宿瑠璃光院白蓮華堂の永代使用料金は1人用で100万円、2人用なら120万円、家族用は200万円だという。
東京都内では、こうした最新型の設備を持つ納骨堂が次々に建設されている。その多くが、都心や駅から数分というアクセスの良い場所にある。なぜこれほど都心に納骨堂が増えているのだろうか。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんに聞いた。
「あるデータによると日本人は年に平均2〜3回お墓参りに行きます。いかに日本人がお墓参りを大事に思っているかわかりますね。それにもかかわらずお墓が遠くて、なかなかお墓参りに行けない人が、都心に新たにお墓を求めているのです」