度重なる制度改正が行われている公的年金。庶民にとっては、将来の年金が減らされる“不安”が募るばかり。また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する137兆円もの年金資金が、株価暴落によってピーク時より直近1年で10兆円も目減りしていることもわかった。これでは公的年金が“100年安心”というのも、にわかに信じられなくなる。
社会保険労務士の井戸美枝さんは、さらに企業年金にも目を向ける。
「企業年金の運用が、非常に難しくなってきています。『適格退職年金」という企業年金の制度も、目標であった運用利率5.5%を維持できず、’11年度をもって廃止されました。しかもこの制度を利用していた企業の40%が、次の手段を打っていないというのが現状です」
年金と同様に、サラリーマンの老後資金の柱となる「退職金」も減額される傾向にあるという。年金や退職金の減額をカバーするために、少しでも多くの貯蓄をしたいところだが、いったいどれほど老後資金を確保しておけば安心と言えるのだろうか。井戸さんは次のように話す。
「総務省が行っている家計調査では、世帯主が65歳以上の退職している世帯の月の支出は、食費6万6,620円、水道光熱費2万2,234円、医療費が1万4,980円など、合計で約27万6,000円になると報告されています」
生命保険文化センターの意識調査では、夫婦2人で最低限の日常生活を送るためには月22万円、ゆとりがある生活レベルにするためには35万4,000円が必要と算出している。60歳からの平均余命を男性20年・女性27年として、年金や貯蓄を合わせて、それぞれ7,000万円、1億円が必要ということになる。
「この金額は意外と多いと感じるかもしれませんが、長い老後生活、お金に困るよりも、ゆとりのある生活を送りたいものです」(井戸さん)