「日本ではここ10年ほどでようやく認知された、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害ですが、発達障害がある人はそれ以前からいたと思われます。昔は近所の友達や大人と接することが多く、そこは傷つきながらも順応するための“道場”だったのですが、いまはパソコンやゲームでひとりで遊んだり、お母さんとの“密室”にこもってしまったりする子どもが多い。だから発達障害が顕著な子が目立つようになったともいえるんです」
そう話すのは、小児発達学博士で大阪大学大学院特任講師の和久田学先生。いつもひとりでポツンとしていたり、イザコザばかりを起こしていたり――「まわりの子どもたちと上手になじめていないような」と不安な人も多いのでは? そこで、2つの発達障害の主な特徴を和久田先生が解説してくれた。
【自閉スペクトラム症】
かつては「アスペルガー症候群」や「広汎性発達障害」などと呼ばれていたもので、社会性、コミュニケーションの障害と、行動や興味に偏りがあるといわれています。いわゆる“暗黙の了解がわからない”“空気が読めない”という特徴があります。たとえば「喉が渇いた」と言う相手の本心が「何かを飲みたい」ということなのを理解できなかったりする。また、行動に変更が利かない、細部に必要以上にこだわり、物事の全体像が見えないといった特徴も。
【ADHD】
「注意欠如多動症」といい、落ち着きがなく、よく考えずに行動する「衝動性」や「多動性」「不注意」などの特徴があります。衝動性とは、たとえばボールが転がってきたら、4~5歳にもなれば、取りに来た人のほうに返そうと考えることができますが、ADHDの子どもの場合は、ボールをすぐに蹴ってしまったりする。ゆっくり考えればわかることなのに、その前に行動してしまうので危険を伴う場合もありますが、専門医に相談したうえでの投薬治療が可能。
では、発達障害の子どもには、どのように対処していくのが有効なのだろうか?和久田先生は、“発達障害もひとつの個性”と語る。
「もし、『うちの子は発達障害かも』と思っても、『なんでそんな当たり前のことができないの!?』と無理に叱ったりしないでください。それはお子さんにも大きなストレスになってしまいます。発達障害は“ひとつの個性”として考えられます。研究が進んでいて対処法もあるので、過剰に心配することはありません」
まずは「発達障害情報・支援センター」のHPなどで調べて、各地域の支援センターなど、公的機関に個別相談することから始めよう。
※本文では「自閉スペクトラム症」という表記を用いていますが、「自閉症スペクトラム」という表記の仕方もあり、意味は同じです。