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親が元気なうちから財産の話をするのは“下品な人間”のすることだと思っていませんか?いえ、ちゃんと準備をしておかないと、その日が来たときに、とても“醜い人間”になってしまうかもしれません。

 

遺産相続のトラブルは、介護や離婚だけでなく、生前贈与、不動産、親族間、遺言書とさまざまなかたちで激しくこじれていくもの−−。そこで、ここでは実際にあった「親族間」でもめた遺産相続を例に、遺産相続のプロフェッショナルにアドバイスをお願いしました。

 

【親族間でトラブル・ケース1】相続手続きに、前妻の子の印鑑が必要なことを知ってびっくり!(58・パート主婦)

 

一人息子に恵まれ、親子3人、つつましく暮らしていました。夫はそんな家族を大切に思い「お金は残せないけど、住むところは残したい」と、一念発起して、都内に5,000万円で土地建物を購入。住宅ローンを組んだときに団体信用生命保険にも加入していたので、亡くなったときは残りのローンの返済義務はなくなりました。私と息子1人だから遺産争いをする要素もなく、遺言書がなくて大丈夫だと思っていたのですが、それが大問題となりました。財産分与のときに、戸籍を見た司法書士さんから「法定相続人はもう1人いますよ。全員の印鑑がないと、財産が分けられません」と言われてびっくり。もちろん、私も息子も知っていましたが、夫には前妻との間に息子がいました。しかし、もう20年も会っていなかったし、親子の関わりもなかったので、存在を気にしていなかったのです。それでも「親子関係がある以上、法律ではあなたの息子と前妻の息子は同額を相続する権利があります」と言われればしかたがない。それで、その面識のない“息子”に会いにいくと「全額いただきます」と言い出した。相続は私が半分、2人の息子が同額の4分の1ずつとなりました。財産は不動産しか残されていなかったので、前妻の子に支払う現金を用意するのに四苦八苦しました。

 

「離婚件数の増加とともに、こうした前の配偶者の間に生まれた子どもとの相続争いは珍しくなくなりました。長年会うこともせず親子関係が希薄な場合、受取人が相続を拒否することもありますが、主張されれば、従うしかありません。ただ、故人が遺言書を作成しておけば、遺留分(民法で保障されている最低限の相続)だけですみました。子の遺留分は法定相続の2分の1。当ケースでは前妻の子に8分の1を支払えばよかったのです」(税理士・久野綾子さん)

 

【親族間でトラブル・ケース2】子どもがいない夫婦は、きょうだいたちにも遺産がいくとは!(79・専業主婦)

 

夫婦仲はよかったものの、30年間連れ添った夫とは子どもに恵まれませんでした。ちょっと寂しい気持ちもありましたが、夫の晩年は「遺産トラブルとは無縁だね」と笑い合っていたものです。しかし、それは大きな間違いでした。夫の死後、弁護士さんに「お子さんがいらっしゃらない場合は、配偶者に4分の3、ご主人様のきょうだいで残りの4分の1を分け合ってもらいます」と言われたんです。夫の兄はすでに亡くなっていたのですが、その場合は甥や姪も代襲相続人になるという。疎遠になっていた親戚なので、2人とも財産放棄のお願いに同意。書類作成のお礼の“判子代”として、10万円ずつ支払うことで納得してくれました。ところが、夫の弟は、親族たちの「義姉さんも老後の生活が大変なんだから、放棄してあげなよ」という助言も無視して、法律で定められた8分の1を要求してきました。それなのに、もらうものだけもらったら音沙汰なし。義弟は夫の三回忌にも、墓参りにも来ていません。

 

「意外に知られていないのが、子どもがいない場合に故人のきょうだいにも相続権が発生すること。ただ、故人のきょうだいやその子ども(甥や姪)には遺留分の権利はないため、遺言を残しておけば全額、配偶者がもらうこともできます。また、借金も財産に入ります。借金を負えない場合は配偶者が相続放棄をする必要があります。このケースのように故人のきょうだいにも相続権がある場合は、同様の手続きが必要となります」(税理士・内田麻由子さん)

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