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今、子どもを育てながら共働きをする世帯が増えています。

働くママは「ワーママ」、子育てに積極的なパパは「イクメン」などと呼ばれています。

 

一方、本気で子育てに取り組みたいのだけれども、仕事のせいで、それもままならないという人も多いのです。それは、「ワーク」と「ファミリー」は両立が難しいという考えにあります。しかし、「ワーク」と「ファミリー」がポジティブなかたちで相乗効果をもたらす可能性はないのでしょうか?

 

そこで、<育児経験は仕事の役に立つ>という考えで、男女2人の研究者が対談します。

 

 

中原淳 男性が育児参加をしていくプロセスですが、いくつか障壁がありそうですね。まずは、「できるとは思えない」という「思い込み」を解除する部分です。性別役割イデオロギーとか時間がないとか、いろいろと思い込みがあるので、それを越えるのが第1の障壁。

 

第2の障壁は、「やり方」を学習していないので、それを学ぶ必要があるということですね。やっぱり最初は相当大変なんですよ。これをちょっと耐えて、1~2カ月やっていくと、手を抜く場所がわかってきたり、最適化できるようになります。

 

ただ、ここでつまずいて、自分のやり方が悪いからとか、自分にはできないからと意味づけしてしまうと、それで終わり、試合終了です。1~2カ月なんとかふんばってみることですね。

 

第3の障壁は、「働き方の見直し」です。育児に参加してみると、これを継続していくためには、自分の働き方を見直さざるをえないとわかる。ここに落としどころがつけば、男性は育児参加をしていくようになると思います。

 

浜屋祐子 そうですね。たとえば仕事の場合、異動して1カ月経って軌道にのっていなくても、「俺には無理だ」と思って辞めてしまったりせず、あれこれ周りの助けを借りながらでも頑張るのって普通のことですよね。

 

育児の場合は、「やっぱり男には向いていない」とか「時間がなくて無理」という言い訳が社会に用意されているからか、なんとかして壁を乗り越えようとまでは思わないのかもしれないですね。でも、よく考えてみたらそれは女性も同じ。家事も料理も育児も最初から上手にできたわけじゃない。

 

中原 まったくその通りです。人はみな、最初は「育児の初心者」なんです。女性だろうと男性だろうと、初めから育児ができるわけではありません。

 

浜屋 一方で、育児スキルに関しては、女性のほうが妊娠・出産がある分、スタートが早い、という特徴がありますね。育児は待ったなしですから、女性は産前産後を通じてものすごい勢いで壁を乗り越え、学習していきます。そういうハードな経験をこなしてきた立場からすると、どうしても学習速度がのんびりした男性を見ると、ちょっとイライラしてしまう……。

 

中原 そして数カ月の差なのに、ものすごく「先輩風」をビュービュー吹かしてきますよね。「おむつくらい、うまく替えなさいよ」と(笑)。

 

浜屋 「今泣いてるのは、眠いからで、お腹空いてる時とは泣き方が違うでしょ!」とか(笑)。

 

中原 いきなりそういう指導をされてもね、男性はわかんないですよ! そこも壁かもしれない。第4の壁は、「妻の先輩風に耐える」かな(笑)。

 

浜屋 あと、ゴミ出しとか、食事の後片付けとか、妻がやっている家事のほんの一部をやっただけで、自分は家事に結構参加しているほうだとアピールしている男性も、まだまだいるようです。

 

中原 そうですか……。昨今は、さすがに「ゴミ出しだけやっても家事参加になる」と思っている人は少なくなっているように感じていましたが、まだ現状は難しいのかもしれませんね。

 

しかし、一方でこうも言えるのかもね。男性が、そもそも家事の総量がどのくらいあるのかをわかっていないから、アピールしているのではないかと。

実際、家事の総量が100で、そのうちゴミ出しはたった2%なのよ、と数字で示されれば、冷静に理解できるはずです。でも、家事の総量がわからないまま、「ゴミ捨てだけやって、家事やったと思わないで」と感情的に言われても、「他になにがあるんだ?」と理解できない。

 

浜屋 家事の総量、ですか! たしかに妻が抱え込んでしまっている場合、まずは、どんな家事をどのくらいやっているのかを「書き出す」など見える形で伝える努力が必要なのかもしれないですね。

 

 

以上、浜屋祐子氏と中原淳氏の新刊『育児は仕事の役に立つ~「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ~』(光文社新書)から引用しました。

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