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じめじめ、じっとり……。今年も梅雨がやってきた。家中の細菌やカビの繁殖が心配になってくるが、5月中旬に衝撃的なデータが公表された。’16年に花王生活者研究センターが、全国の複数の家庭の菌汚染実態を調査したものだが、なんとトイレよりキッチンのほうが、細菌や、カビや酵母といった真菌が多く繁殖していたというのだ。

 

汚いイメージがある「トイレの便座」は「菌がやや多い」家庭が31%、「菌が少ない」家庭が69%だった。それに対し、「キッチンの蛇口つけ根」は、「菌が多い」家庭が67%、「菌がやや多い」家庭が23%、「菌が少ない」家庭は10%と、圧倒的に汚染されている……。ほかにも、洗剤容器裏や台ふきん、スポンジなど、キッチンでの菌の繁殖はかなり活発なようだ。

 

「今回の結果は、ある意味“予想以上”でした」と苦笑いするのは、花王生活者研究センター研究員で、理学博士の名取陽祐さん。

 

「実は当社では15年ほど前にも同様の調査を行っており、当時もキッチンのほうがトイレよりも多くの菌数が検出されていたのです。当時と比べれば、キッチンの仕様も大きく変わり、以前より格段に掃除しやすくなったはずなのに、汚染度が高いという事実に驚きました。トイレは『不潔だから掃除しなければ』という意識になるのに、キッチンは『不衛生』と認識されていないのかもしれません。実際は菌がすみやすい場所なんですが……」(名取さん・以下同)

 

菌が増殖する3大条件は「温度」「湿度」「栄養」だ。

 

まず温度。菌は20度を境に活性化する。たとえば自然界に広く分布し、食中毒も起こす黄色ブドウ球菌の場合、15度で10個だったものが20度になると約100個と一気に10倍に!その後25度で約1万個、30度で約100万個と、すさまじい勢いで増えていくから恐ろしい(※いずれも12時間後)。

 

また、菌は湿度70%以上を好み、皮脂や角質なども含めたあらゆる有機物を栄養源としている。つまり常に水と熱を使い、人の皮脂だけでなく、食材や調味料と、栄養源がたっぷりあるキッチンは、菌の繁殖にうってつけの場所なのだ!

 

「すべての菌が病気に直結するものではありません。ただし、菌が増殖しやすい環境であれば、当然、食中毒の原因となる菌も増える可能性があります」

 

厚生労働省の発表によると、食中毒の原因の1位は冬場に大流行するノロウイルスだが、2位から8位まではサルモネラ属菌やウェルシュ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌などの細菌たち。実に食中毒患者の半数以上が、細菌が原因で発症しているという。特に6〜8月までは、細菌が原因の食中毒が多発する時期だ。

 

それにしてもなぜ、蛇口まわりが高汚染スポットになっているのだろう?

 

「まず考えられるのは、蛇口にはこれといった掃除の方法がないからでしょう」

 

確かに「蛇口の取っ手の掃除には何を使っているか」を聞いた同社調査結果によれば、44%の女性たちが「わからない」と回答している。この結果からは、「ついで」もしくは「無意識」に掃除を行っている人が多いことをうかがわせる。

 

「そうなんです。しかし蛇口の取っ手は、肉汁や油などたくさんの汚れが付着した手で頻?に触れる場所です。みなさんが思う以上に菌数は多く、ふだんからピカピカに磨いている家庭でもない限り、水をかけた程度では菌を落としきれません」

 

蛇口のつけ根も汚れが付着しやすく、ぬれて湿度も高いが、そのかわりに掃除の盲点になりやすい場所だ。

 

「まずは蛇口周辺にたまった汚れを一度しっかり取り除くこと。その後は日々、お手入れする習慣をつけましょう」

 

そしてキッチン全体について注意しなくてはいけないのは、「きれい」と「清潔」は違うということ。

 

「トイレよりキッチンの菌数が多いという結果になりましたが、キッチン掃除をちゃんとやっているつもりでも、実は水拭きが中心という方も多いのではないでしょうか。でも、トイレ掃除を水拭きだけで済ませることはまずありませんよね。キッチンも、洗剤などでしっかり汚れを落とすことが重要です。その上で、必要に応じて除菌グッズを組み合わせましょう」

 

汚れているところにアルコールスプレーなどを吹きかけるだけでは、効果は一時的だという。

 

「一見きれいなキッチンが、必ずしも衛生的とは限りません。特に気温・湿度ともに高くなる夏場は、家庭内衛生管理を心がけましょう!」

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