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厚生労働省の人口動態統計によれば、「家庭における主な不慮の事故」の死亡者数は、最新の2016年のデータで、年間1万4,175人だった。そして同年の交通事故死者数は5,278人であるため、じつに3倍近い人が、最も安全と思われる“家庭内”で命を落としてしまっていることになる。

 

「種類別で最も多いのが溺死で5,491人。次に、誤嚥などによる窒息が3,817人。部屋での転倒や階段からの転落などが2,748人と続いていきます。死亡者数の約85%が65歳以上の高齢者です。住みなれたマイホームの中に、多くの危険が潜んでいるということを意識して、対策を立てておくのは、とても重要なのです」

 

こう語るのは、家庭内で起きる事故の事例に詳しい一級建築士の井上恵子さん。そこで、施すべき対策についてみていこうーー。

 

■10万円で転落事故は激減させられる

 

「日本の家屋には狭い国土と建築の特性上、階段はつきものです。特に古い家ほど階段が急だったりします。私は高齢者のいる家庭では、階段の両側に手すりを設置することを勧めています」

 

そう教えてくれたのは、来院診療のほか、おもに家庭内(病院以外)で死亡した人の検視を、警察署の依頼で10年以上にわたって行ってきた愛知県春日井市「田島クリニック」の院長で医学博士の田島正孝さん。ネジなどで取り付ける手すりは、ホームセンターなどで安価に売っているが、強度にも注意を払ったほうがいい。つかまって外れたら、それこそ大ケガにつながりかねない。

 

「工務店などに依頼すべきです。材料、大工さんの日当などを合わせても10万円くらい。それで安全・安心が得られるのであれば、高い買い物ではないでしょう」(前出・井上さん)

 

また、生活習慣の見直しも不可欠だという。

 

「洗濯カゴを抱えての階段の上り下りは、大変危険です。私は高齢の母のため、物干しの位置をベランダから庭先に変えました。また、花粉やPM2.5対策なども兼ねて、浴室乾燥や乾燥機付き洗濯機に切り替える手もあります。そもそも、階段の上り下りの機会を減らすに越したことはない。1階にトイレがあるのであれば、セキュリティ対策や耐震対策をしたうえで、1階での寝起きを高齢の方にはお勧めします」(井上さん)

 

■数センチの段差でもリフォームの検討を

 

危険は階段ばかりではない。じつは転倒・転落での死亡者のうち、半数以上は平たんな場所で起きている。

 

「敷居や、床に敷いていたカーペットなど、わずか数センチの段差で引っかかって転倒することもあります。段差をなくすリフォームを検討しましょう」(井上さん)

 

大きなリフォームが難しい場合、段差に簡易スロープを付けるという方法もある。

 

■ゲートをつけて台所を隔離せよ

 

「火や熱湯、刃物など、キッチンは子どもが入ると危険なものばかりです。乳幼児がいる家は、キッチンの入口にゲートを取り付けましょう。また、高齢の方は消し忘れも要注意。IHへの切り替えを検討しましょう。電子レンジを使った調理や、炊飯器での煮込み料理もできる時代です。なるべく“火を使わない”調理法を工夫するのもいいかもしれません」(井上さん)

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