image

 

深刻な高齢化、かさむ介護費。国の方針もあり、在宅介護が重要視されている。「自宅で介護」を望む人が多いのも事実だが、いくらかかるのだろうか――。

 

「国は現在、『地域包括ケアシステム』を推進しており、今後『施設介護』から『在宅介護』の流れが強まるでしょう」

 

そう日本の超高齢社会の未来を予測するのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』(サンライズパブリッシング)の著者で、介護施設コンサルタントの齋藤直路さん。65歳以上の人口は現在、3,000万人を超えており、2042年には約3,800万人でピークを迎える。介護の需要が今後ますます増加することは火を見るよりも明らかだ。

 

しかし施設での介護は、高額な資金が必要になる。また、在宅介護は家族の負担も大きく、介護疲れによる虐待や、介護離職に端を発する貧困など、問題も山積。一方で、頼れる家族のいない独居老人も多いのが実情だ。

 

そこで現在、国は「地域包括ケアシステム」(前出)を推進している。住まいを中心に、日常生活圏内で病院、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどが、さまざまな支援や介護、医療、サービスを一体的に提供するものだ。地域のなかで安心して介護や医療などが受けられるシステム作りだという。

 

「介護を受ける側にとっても、在宅介護のメリットは大きい。たとえば、トランスファーショックといって、自宅とは遠く離れた施設に住むことで、環境の違いに戸惑い、近所との交流が途絶える寂しさを感じる。結果、活動量が低下して、認知機能の衰えが出てしまうこともあるのです」(齋藤さん)

 

実際、内閣府の調査でも、「介護を受けたい場所」は、「自宅」と答えた人が全体の34.9%という結果が出ている(平成24年「高齢者の健康に関する意識調査」)。今後、ますます重要性が高まる在宅介護。

 

それでは実際に終生、在宅介護をすることで、どのくらいのお金がかかるのか。代表的なケースを、介護施設コンサルタント業務をする「スターパートナーズ」の垰和宏さんに、シミュレーションしてもらった。

 

それぞれのケースでは、介護保険自己負担1割で算出。単純に介護度の利用限度額ではなく、現実的に使用される介護費用を想定している。介護用のベッドの費用や、バリアフリーの改築費用などは含まれていない。

 

また、将来の平均寿命が現在の87歳(女性)よりも5年ほど延びることを想定し、92歳(93歳の誕生日の前日)で亡くなったと仮定している。

 

■自立度が高いまま自宅での生活を継続したケース

 

5年前に夫に先立たれ、一人暮らしをしていたAさんだが、85歳を迎えたころから、加齢の影響により日常生活で不便を感じることが増えた。

 

知人の勧めで介護認定の調査を受けたところ、要支援2に。週に2回ずつ、掃除や買い物などの家事サポートのため、要支援者のための訪問介護である「介護予防訪問介護」(月の負担額は約2,400円と、リハビリ目的で「介護予防通所介護」(同3,400円)を利用。

 

その1年後、86歳のときに要介護1に上がってしまったが、ケアプランは大きく変えず(訪問介護で月約3,840円、通所介護で月6,890円)継続。身体の衰えはあったものの、自宅での生活を続け、93歳を迎える前日、自宅で亡くなった。

 

「このケースのように、要介護になっても比較的自立した生活をし続ける方も少なくありません」(垰さん・以下同)

 

【Aさんの自己負担額】

 

<85歳・要支援2>

介護予防訪問介護(II):約2,400円/月

介護予防通所介護:約3,400円/月

 

<86~92歳・要介護1>

訪問介護:約3,840円/月

通所介護:約6,890円/月

 

85歳から92歳までの8年間で合計:97万920円〈内訳:(2,400円+3,400円)×12カ月+(3,840円+6,890円)×84カ月〉

 

■脳卒中で医療が必要なケース

 

子どもたちが独立し、夫と2人で暮らしていたBさん。お互い元気が取りえだったが、夫は85歳を過ぎたころから身体機能の低下を実感。86歳で要支援2と判定されてからは、週に2回、通所介護でリハビリを受けた。

 

1年後、87歳で脳卒中を患い、状況は一変した。一命はとりとめたものの、退院後もまひは残ってしまい、要介護3に引き上げられた。高齢のBさんにとって、1人で要介護3の夫を介護することは困難で、1週間のうち通所介護を2~3回と、短期入所を組み合わせて利用し、週に1日は、脳卒中後の夫の療養生活管理のため、自宅の訪問看護にあてた。

 

「訪問介護と訪問看護は、別ものです。訪問看護は主に看護師などが自宅に来て、医師の指示のもと、医療や看護面でのサポートをします」

 

徐々に夫の活動量は低下し、1年後には要介護4、その3年後に要介護5に上がり、92歳で死亡した。

 

「脳卒中などのライフイベントがあると、当ケースのように、月のほとんどを通所介護と短期入所にあてることになります」

 

【Bさんの自己負担額】

 

<86歳・要支援2>

介護予防通所介護:約3,400円/月

 

<87歳・要介護3>

訪問看護:約4,210円/月

通所介護:約1万1,110円/月

短期入所:約1万1,610円/月

 

<88~90歳・要介護4>

訪問看護:約4,940円/月

通所介護:約1万2,370円/月

短期入所:約1万3,490円/月

 

<91~92歳・要介護5>

訪問看護:約6,500円/月

通所介護:約1万3,530円/月

短期入所:約1万3,780円/月

 

85歳から92歳までの7年間で合計:228万4,200円〈内訳:(4,210円+1万1,110円+1万1,610円)×12カ月+(4,940円+1万2,370円+1万3,490円)×36カ月+(6,500円+1万3,530円+1万3,780円)×24カ月〉

 

「当ケースでは228万4,200円と算出されましたが、さらに訪問医療が必要となれば、医療費や薬代も加算されます」